2017 Fiscal Year Annual Research Report
オレキシン神経特異的機能操作による動機づけ神経回路の解明と意志力検証技術の開発
Publicly Offered Research
Project Area | Creation and Promotion of the Will-Dynamics |
Project/Area Number |
17H06053
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
溝口 博之 名古屋大学, 環境医学研究所, 講師 (70402568)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 意志力 / 動機づけ / オレキシン |
Outline of Annual Research Achievements |
意志力は自己をコントロールし、難局を打開するのに必要な力である。意志力の著しい消耗や欠如はうつ病などの精神疾患の発症に繋がる。そのため、意志力を強化することは、ストレス社会を生き抜き、より良い生活を育むうえで優れた方法であり、自らを守り抜く術である。一方、本研究で取り上げるオレキシンは覚醒維持や摂食を含む動機づけ行動に対して促進的に働くことが知られている。オレキシンはエネルギー産生・効率に関与するだけでなく、やる気の根幹をなすドーパミン神経を中心とした報酬回路システムを調節することから、意志力との関係性が連想される。そこで本研究では、独自に考案した計算論に基づく行動解析システムと神経活動測定から意志力検証技術を開発し、意志力による自己コントロールにおけるオレキシン神経系の機能的役割を解明する。平成29年度において、課題に対する動機づけ行動を検討するため、タッチスクリーン式弁別試験を確立させることができた。これにより、報酬に対する動機づけとしてギャンブル試験を、課題に対する動機づけとして弁別試験を用いることで、意志力を検証できるシステムを構築できた。次に、オレキシン-Creラットを用いて、オレキシン神経特異的にDesigner Receptors Exclusively Activated by Designer Drugs (DREADD)を発現させた。このラットにclozapine-N-oxideを投与するとオレキシン神経を特異的に活性化させることができる。このラットを用いて、動機づけ行動におけるオレキシン神経の役割について検討したところ、オレキシン神経の活性化は、報酬に対する動機づけ行動、課題に対する動機づけ行動に影響を及ぼした。この事から、オレキシン神経はやる気・意志力に関わる神経回路の一旦を担う可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
動機づけ行動におけるオレキシン神経の役割について行動学的に評価できた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、蛍光イメージングシステム(ファイバーフォトメトリー)を用いて、動機づけにおけるオレキシン神経活動を測定し、オレキシン神経を光操作したときの動機づけ行動について検討する。また、DREADD 制御下の動機づけ行動について計算論によるオレキシン神経機能のパラメーター推定(報酬価値を計算、学習係数、逆温度など)を行う。計算理論を土台にすることで、意志力に関わる脳活動の意味付けを行う。また、摂食行動、摂水行動におけるオレキシン神経の役割についても検討する。
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