2017 Fiscal Year Annual Research Report
ファイバーフォトメトリーを用いた意志力発現機構の解析
Publicly Offered Research
Project Area | Creation and Promotion of the Will-Dynamics |
Project/Area Number |
17H06061
|
Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
犬束 歩 自治医科大学, 医学部, 助教 (30584776)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | オキシトシン受容体 / 前頭前皮質 / グルココルチコイド受容体 / ナノボディ / ファイバーフォトメトリー |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、社会における競争的傾向が高まっている。その際、競争に敗北した人達がいかに意志力を保つかということは重要な課題である。マウスやラットにおいても、社会的敗北はうつ病に類似した意志力低下現象をもたらすが、その神経機構は良く分かっていない。申請者は社会的敗北ストレスによってマウス・ラットに誘導される社会的忌避行動における神経機構を解明することを目的とした。 平成29年度の研究実績としては、ストレス応答に係るグルココルチコイド受容体の活性化をCreリコンビナーゼによる組換え効率へと変換する分子ツールを開発が挙げられる。赤色蛍光タンパク質(RFP)はもともと4量体を形成するサンゴ由来の蛍光タンパク質DsRedから単量体であるmCherryや二量体であるtdTomatoなど多くの変異体が作出されてきた。申請者はmCherryに対して特異的に結合するナノボディを利用して、RFP依存的に再会合して機能するRFP-dependent Creを作出した。このRFP-dependent Creはグルココルチコイド受容体の活性化に伴う核移行をCreリコンビナーゼの組換え活性上昇として転換することができた(論文投稿中)。また、前頭前皮質のオキシトシン受容体発現細胞には従来報告されているソマトスタチン陽性インターニューロン以外の投射ニューロンが存在することを見出した。さらに、社会的敗北ストレスによるオキシトシン神経系の活性化については論文発表に至った。ファイバーフォトメトリーによる解析に必要なオキシトシン神経特異的なGCaMPの選択的発現を達成した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
グルココルチコイド受容体の活性化を解析するための分子ツールの開発は初年度で論文投稿に至るなど想定以上に順調に進んでいる。一方で、ファイバーフォトメトリーを用いた活動記録にかける研究時間がトレードオフの結果として低下した。目的に対する全体的な進捗状況としてはおおむね順調である。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究において、社会的敗北ストレスによってオキシトシン神経系が活性化していること、室傍核のオキシトシン神経からは前頭前皮質や前部帯状回に投射がみられること、前頭前皮質のオキシトシン受容体発現細胞にはソマトスタチン陽性のインターニューロンだけではなく扁桃体へ投射する神経群が存在すること、などを明らかになってきた。また、室傍核や前頭前皮質、扁桃体にはグルココルチコイド受容体が豊富に存在している。そこで、平成30年度の研究としては平成29年度に作成した分子ツールを用いてin vivoにおけるグルココルチコイド受容体活性化細胞の標識を図る。また、dimerization-dependent RFPをグルココルチコイド受容体に標識することで、グルココルチコイド受容体の活性化に伴う二量体化を赤色蛍光の上昇としてファイバーフォトメトリーを用いて検出できる可能性がある。コントロールマウスおよび社会的敗北ストレスによって社会的忌避行動が誘導されたマウスにおいて、他個体と接触させたときの室傍核のオキシトシン神経および前頭前皮質のオキシトシン受容体発現細胞のファイバーフォトメトリーを用いた活動記録を行う。前頭前皮質のオキシトシン受容体発現細胞のDREADDを用いた活動操作もしくはジフテリア毒素A断片を用いた細胞死誘導を行い、社会的敗北ストレスによって誘導される敗北姿勢の提示や社会的忌避行動がどう影響を受けるのか解析する。
|
Research Products
(5 results)