2018 Fiscal Year Annual Research Report
A comparative study of prehistoric basketry in China and Japan
Publicly Offered Research
Project Area | Rice Farming and Chinese Civilization : Renovation of Integrated Studies of Rice-based Civilizations. |
Project/Area Number |
18H04175
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
松永 篤知 金沢大学, 資料館, 特任助教 (50805760)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 編物 / 先史時代 / 中国 / 日本 / 東アジア / 箕 / 敷物圧痕 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度の研究実績の概要は、以下の通りである。 (1)中国出土編物資料の調査研究:2018年9月10日~23日、浙江省にて出土編物及び関連資料の調査を実施した。良渚博物院で卞家山遺跡の編物及び織物圧痕、田螺山遺址現場館で田螺山遺跡の編物、跨湖橋遺址博物館で跨湖橋遺跡の編物、中国絲綢博物館で銭山漾遺跡の「絲線」、浙江省博物館武林館区で河姆渡遺跡の編物及び銭山漾遺跡の「絲帯」等を実見・観察した。2019年1月5日~16日には、河南省・河北省・北京市にて同様の調査を実施した。河南省では、西山工作站で仰韶~二里頭期の土器底部を観察し、殷墟で葦様圧痕を実見した。河北省では、磁山文化博物館と邯鄲博物館で磁山遺跡の網代圧痕や編布圧痕を実見・観察した。北京市では、中国国家博物館で河姆渡遺跡の編物や半坡遺跡の網代圧痕等を実見・観察した。さらに2018年11月4日には、日本中国考古学会2018年度大会で暫定的な編物変遷案を提示した。 (2)日本国内出土編物資料の調査研究:日本国内の出土編物資料については、2018年11月21日~22日、岡山県古代吉備文化財センターで津島遺跡の編物・被籠土器・環状蔓製品を実見・観察し、弥生時代編物の典型例を捉えた。また、2018年12月15日~16日、福島県南相馬市文化財整理室で鷺内遺跡の編物を実見・観察し、縄文時代編物の使用に関する情報を得た。これらの調査と同時に、もじり編み技術について研究を進め(製作実験含む)、『北陸史学』の論文の一部及び講演の形で発信した。 (3)現代民具編物資料の調査研究:出土編物資料の調査研究に並行して、民具情報の収集も進めた。論田・熊無の箕(富山県)や水口細工(滋賀県)等の実物を入手し、各々の構造や素材を詳細に観察した。また、石川県のこつら細工や檜細工について考古資料の編物技術系統の中で位置づけ、『北陸史学』の論文中に示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの進捗状況については、ほとんど当初計画通りに進んでいる。 平成30年度前半には、考古学をはじめとして、歴史学・民俗学・民族学・植物学等、編物及び稲作に関係する情報を広く収集することに努めた。 そして、平成30年度中頃~後半は、各種編物調査の実施期間として、中国と日本の両国内で出土した編物資料(実物資料・圧痕資料等)を各地の研究機関にて実見調査した。当初計画では、中国浙江省と西日本各地での調査を予定していたが、実際には浙江省と西日本に加えて、中国河南省・河北省・北京市及び東日本でも同様の調査を実施することができた。その点では、ある意味予定以上の展開となったが、逆に浙江省と西日本での調査量は、若干抑えることとなった。中国・日本ともに、出土編物資料調査にあたっては、編み方・器種・素材その他について、高解像度デジタル一眼レフカメラや3Dデータ採取を駆使し、できる限り詳細な観察・記録をおこなった。これも、計画通りの精度で実施することができた。それだけではなく、出土編物資料の調査と同時に、必要に応じて民俗・民族調査をおこなうという計画も立てていたが、これも日本国内の民具資料(論田・熊無の箕や水口細工等)を収集するという形で上手く実行することができた。 そして、平成30年度後半から末にかけては、一度中間成果をまとめるという予定になっていたが、『北陸史学』での論文発表や日本中国考古学会大会での口頭発表の形で、やはり実現することができた。この中間成果について、学会参加者等から貴重な意見をいただくこともでき、中国と日本の先史時代における編物の変遷過程や、両者の共通点・相違点及びその要因、編物の変遷と稲作及び文明形成の関わりについて、ある程度の見通しを立てることができた。 以上のように、予定していたことはほぼ全て実施することができ、本研究はおおむね順調と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、これまでほとんど計画通りに順調に進んでいるため、基本的には当初計画に則り、着実に成果の取りまとめに向かう。 すなわち、2年目であり最終年度となる平成31年度(令和元年度)は、平成30年度に実施した各種調査等の成果を受けて、補足的な追加調査を適宜実施しながら、最終的な成果を取りまとめることとする。 特に平成31年度(令和元年度)前半~中頃は、追加調査の実施期間とし、基本的には平成30年度に実見調査できなかった編物資料や、民俗・民族事例の調査をおこなうこととする。調査方法は原則として前年度と同じで、中国と日本で出土した各種編物資料を、各地の研究機関にて実見調査することを基本とし、必要に応じて民俗・民族調査を追加する。 場合によっては、出土遺物の観察や民俗・民族事例では足りない情報を補うために、文献調査や編物製作・使用実験等も実施することも計画に含める。文献調査については、中国・日本ともに、文献史料の編物に関する記述を探して、その内容を整理する。編物製作・使用実験については、平成30年度も少し実施しているが、編物の基本技法を習得している代表者自身が自らの手で先史時代の編物と同じ物の製作・使用を試みる。 これらの追加調査は、平成30年度の中間成果を踏まえた上で実施するものであり、内容的にはある程度限定的な調査とする。つまり、中間成果の知見を補足・確認することを調査の主たる目的とする。 そして平成31年度(令和元年度)後半に、これまでの調査成果を取りまとめる。同年度中頃までに得た各種データを整理し、最終的な成果報告作成へと向かう。この段階で、改めて中国と日本の編物資料を多角的に徹底比較する。そして、中国と日本の先史時代における編物の変遷過程や、両者の共通点・相違点及びその要因、編物の変遷と稲作及び文明形成の関わりについて、具体的な結論まで導く。
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