2018 Fiscal Year Annual Research Report
社会的相互作用を支える無意識の対人間協調ダイナミクス
Publicly Offered Research
Project Area | Construction of the Face-Body studies in transcultural conditions |
Project/Area Number |
18H04185
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三浦 哲都 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (80723668)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 社会神経科学 / 顔 / 因果性解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、二者が向かい合って立つと無意識的に姿勢動揺が同期することが報告され、この同期が社会相互作用を支える神経系の機能として注目され始めている。しかしながらこれらの先行研究は、姿勢動揺の時系列データの相互相関により同期を定量化するにとどまっており、その背後に潜むダイナミクスは検討していない。つまり二者の身体の潜在的な協調ダイナミクスと、顔がそれに与える影響は不明である。本研究の目的はこれらを明らかにすることである。 初年度はまず、二者間の姿勢同期がどの程度の距離で生じるのか、またパーソナルスペースとどのように関連しているのかを調査した。二者が複数の距離(つま先間の距離が20、40、60、80、100cm)で向かいあって立つ(対面条件)、背中を向けて立つ(背面条件)という2つの条件を設定した。姿勢動揺は床反力計および動作解析装置を用いて計測した。パーソナルスペースは先行研究に習って計測した。パーソナルスペースは解析中なので、二者の姿勢同期について述べる。同期の指標として、相互相関解析、線形因果性解析を試みた。相互相関解析の結果は、先行研究と同様の結果であった。すなわち、対面条件のみにおいて、二者間の同期が確認された。さらに、足圧中心と頭部動揺に対して線形因果性解析を行った。その結果、二者間の影響量は頭部動揺においてより顕著に観察された。このことは、二者が互いに相手の頭部(顔)から影響を受け動揺しているが、その動揺は身体の各関節の協調により補償されていることを示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
二者間の姿勢同期の指標として、申請時に予定していた非線形因果性解析を試みたが、うまく影響量を検出できなかった。その理由としては、そもそも解析手法がこのデータに適していないか、もしくは応用方法に問題があるかのどちらかが考えらえる。この点については引き続き研究を進める。しかしながら、その他の結果(線形の因果性解析の結果)から、二者間の姿勢同期に顔が与える影響についての理解を深めることができた。現在解析中のパーソナルスペースとの関連を調べることで、さらなる研究の進展が期待される。以上の理由から、おおむね順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、まずは初年度の課題を論文化するための検討事項を2つ述べる。1つ目は、二者間の姿勢同期について申請時に予定していた非線形因果性解析の応用を試みることである。これによって、時系列データの背後に潜むダイナミクスについて明らかにできる可能性がある。2つ目は、パーソナルスペースと姿勢同期、因果性との関連を明らかにすることである。この2点を確認し、そこまでの知見を論文化する。 次の実験としては以下の条件設定を考えている。まず、相手の背中を見る条件など、相手との位置関係に関する条件を増やすことである。初年度は、二者間距離を複数設定したために、実験時間内に床反力計を何度も動かす必要があり、対面と背面の2条件しか設定できなかった。次年度は初年度の知見をもとに、相手の影響が及ぶ距離、及ばない距離の2つの距離において、様々な二者の位置関係を検討する。さらにその際に、姿勢動揺の方向性についても検討する。
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