2018 Fiscal Year Annual Research Report
鉄カルコゲナイド超伝導体とその関連物質におけるトポロジカル相の探索
Publicly Offered Research
Project Area | Frontiers of materials science spun from topology |
Project/Area Number |
18H04212
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鍋島 冬樹 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (30782776)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 鉄カルコゲナイド超伝導体 / トポロジカル超伝導 / 薄膜 / 電界効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
始めの研究計画では,インターカレーションにより,鉄カルコゲナイドにキャリアドーピングと低次元化を行う予定であったが,実現可能性を考えて方針を変更して,電気二重層トランジスタを用いた電界効果によるキャリア注入を利用することにした.この方法の利点は,通常のパルスレーザー堆積法により作製した薄膜をそのまま使用できることであり,SeサイトのTe置換による効果を簡単に調べることができることである.また,バイクリスタル基板を用いて薄膜を作製すればジョセフソン接合が得られるため,ジョセフソン効果測定により,トポロジカル超伝導・マヨラナ粒子の検証を行うことができることもメリットの一つである.バイクリスタル基板が手に入る基板材料は主にSTO,MgO基板であり,これらの基板で高品質な薄膜を作製する必要がある.そこで初年度はこれらの基板を用いて成膜条件の最適化を行った.また同時に,通常の単結晶基板上の薄膜を用いて電気二重層による電界効果測定を行い先行研究で報告されているFeSe以外の,Te置換したFe(Se,Te)でも電界効果のテスト実験を行った. さらに,薄膜試料(具体的にはFeTe/Bi2Te3多層膜)の磁場侵入長を測定するための相互インダクタンス測定プローブの作製を行い,従来型超伝導体であるNbN薄膜を用いた,低温でのテスト測定に成功している.測定した相互インダクタンスから試料の磁場侵入長の値を得るには,試料のサイズ効果を含んだ解析が必要であるが,現在これを試みているところである.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
粒界接合におけるジョセフソン効果・電界効果実験を行うための準備は,測定プローブの作製以外はほぼ完了した.電界効果実験のためには,電解液による試料のエッチングにより,試料表面の酸化膜を除く必要があるが,Te置換した試料は,FeSeで用いた方法ではエッチングできず,極薄膜化ができないという問題が明らかになったが,エッチング方法を工夫することによりこれをクリアした.これにより粒界接合膜のジョセフソン効果・電界効果の組成依存性の研究はスムーズに進行するのではないかと期待できる. しかしながら,研究計画を練り直していたために,実質的な研究開始が遅れたこともあり,ジョセフソン効果測定プローブはまだ完成していない.そこで上のような自己評価とした.
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度も昨年度に引き続き,Fe(Se,Te)粒界接合におけるジョセフソン効果の電界依存性・組成依存性の研究を行う.そのために,まずジョセフソン効果測定プローブを完成させる.測定プローブが完成したら,STOバイクリスタル基板を用いて粒界接合膜を作製し,これのジョセフソン効果・電界効果の測定を行う.トポロジカル超伝導のエッジ(端)にはマヨラナ粒子が存在し,それにより,トポロジカル超伝導体同士のジョセフソン接合にマイクロ波を照射したときにI-V特性に現れるステップ(シャピロステップ)のステップ幅が通常の2倍になることが予想されている.これを利用して電界効果により薄膜表面に現れる超伝導がトポロジカル超伝導体であるかどうかの検証を行う. さらに,FeTe/Bi2Te3多層膜を作製し,先行研究で報告されている超伝導の再現実験を行う.また,相互インダクタンス法による磁場侵入長測定の解析法を完成させ,この多層膜の磁場侵入長の温度依存性を測定することで,この超伝導のギャップ構造の対称性を明らかにし,超伝導発現機構に関する知見を得る.
|