2018 Fiscal Year Annual Research Report
ラインノード半金属およびその超伝導物質の理論的探索
Publicly Offered Research
Project Area | Frontiers of materials science spun from topology |
Project/Area Number |
18H04224
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山影 相 名古屋大学, 理学研究科, 助教 (90750290)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | トポロジカル物質 / トポロジカル半金属 / トポロジカル超伝導 / ラインノード / マヨラナ / トポロジカル不変量 |
Outline of Annual Research Achievements |
物質において,バンドギャップにラインノードが生じるために必要な対称性や,ラインノードが有しているトポロジカル不変量などの基礎的な性質はこれまでにほぼ全て理解されていると思われていた.ところが意外なことに,磁性体において,これまでに知られていないタイプの機構によってラインノードが出現しうることが分かった.しかも,これは,磁性体の磁化が容易面内の如何なる方向であっても安定である[Y. Ominato, AY, and K. Nomura, to be submitted].これをきっかけとしてトポロジカルラインノード磁性体の探索が広く行われ,候補物質の初検証へつながることが期待される. また,ラインノード半金属における歪の効果を調べるための低エネルギー有効模型を導出した.これにより,歪とそれにより誘起される(擬)磁場の一般的関係が分かるようになり,歪の効果を定性的に理解・予言できるようになった[N. Nakayama and AY, in preparation]. トポロジカル超伝導体を特徴づける不変量は,1次元(あるいは3次元系において表面と並行方向の運動量を固定した擬一次元系)においてはZとZ2の二種類がある.任意の空間群に対してこれらと超伝導対称性の関係の完全な分類を目指し,具体的に空間群Pmmaの場合に分類を行った.さらにその帰結の一つとして,結晶の対称性が存在するにも関わらず,任意の磁場に対して,トポロジカル超伝導体の表面に創出するマヨラナ粒子が消失することが分かった[Y. Yamazaki, AY, et al., in preparation].これは「マヨラナイジングスピン」として知られる,完全に一軸異方的な振る舞いとは全く異なる.以上の基礎理論はそのまま,ラインノード半金属における超伝導状態の解析に応用できる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ⅰ.ラインノード半金属の新物質開発に関する研究は進めなかったが,その代りに,当初の計画には含まれていなかったことであるが,磁性体において未知のタイプのラインノードが存在することが分かり,ラインノード磁性体研究の新しい方向性を拓いた.この結果をまとめた論文も投稿間近であり,予想外の進展があった. ⅱ.当初の計画ではないが,ラインノード半金属における歪の効果を記述する有効理論を構築することができた.このテーマについて更に研究を進める予定である. ⅲ.ラインノード半金属における超伝導状態を解析するための基礎理論としての分類理論を部分的に構築した.分類の完成を目指すとともに,当初の計画である,ラインノード半金属物質におけるトポロジカル超伝導状態に関する研究を進める準備が整った.
以上を総合し,本研究は順調に進展していると判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
ラインノード半金属における歪によって誘起される(擬)ランダウ準位を明らかにする.既に部分的には結果が出ており,歪と擬磁場の一般的関係を記述する低エネルギー有効理論は得られている.なお,他グループによって独立に本研究と同等の研究[S. W. Kim and B. Uchoa, arXiv:1901.00573]が行われつつあるが,ラインノード半金属の場合には,有効理論は必ずしも正しくない.そこで,本研究では微視的なタイトバインディング模型による検証も行う. 次に,ラインノード半金属における超伝導状態の性質を明らかにする.対象とする系はCa2AuNおよびCaPtPの他に,申請者がこれまでに見出してきたCaAgX(X=P,As), YH3, CaSb2である.実験的にはまだこれらの物質で超伝導は見つかっていないので,可能な全ての対称性(既約表現)[M. Sigrist and K. Ueda, Rev. Mod. Phys. 63, 239 (1991); T. Nomoto et al., Phys. Rev. B 94, 174513 (2016)]の超伝導を考慮する.特に注目するのはトポロジカル超伝導であり,そのトポロジカル不変量を解析する.結晶の対称性により,対称操作の数の分だけトポロジカル不変量があるが,その内のほとんどは零になることが申請者の先行研究により分かっている[A. Yamakage et al., Crystals 7, 58 (2017)]ので,限られた数個のトポロジカル不変量だけを実際に数値計算すれば良い. 具体的な計算には,各々の物質の常伝導状態におけるタイトバインディング模型から,超伝導状態を表すBdGハミルトニアンを構成し,これを用いる.さらに,表面状態の状態密度もrecursiveグリーン関数法により計算する.
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