2018 Fiscal Year Annual Research Report
Research on new phenomena originating from Weyl and Dirac Fermion in a bulk single crystal
Publicly Offered Research
Project Area | Frontiers of materials science spun from topology |
Project/Area Number |
18H04226
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
村川 寛 大阪大学, 理学研究科, 助教 (40611744)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ワイル半金属 / 空間反転対称性の破れた超伝導 / 磁性ワイル半金属 / 強磁場量子物性 |
Outline of Annual Research Achievements |
空間反転対称性の破れた超伝導体PbTaSe2のTa核NQR測定を行い、核スピン・格子緩和時間の振る舞いからs波的な超伝導状態が支配的であることを明らかにした。一方で、熱起電力や電気抵抗率の測定によりノーダルライン上に位置するフェルミ面に起因すると期待される複数の量子振動の観測にも成功した。 また、フラックス法により希土類元素を含んだ磁性ワイル半金属の単結晶を複数種類合成した。それらの中には、強磁性秩序とともに巨大な異常ホール効果を示す物質も見つかった。これらの物質群では、磁気秩序構造と電気伝導特性が密接に関係していることが確認されたため、阪大強磁場センターにおいて55テスラの強磁場下での磁化と電気抵抗率の測定を行い、非相反伝導やカイラルアノマリーの観測に向けて研究を進めている。 さらに、ワイル半金属NbAsを対象として、様々な磁場方向で量子振動の位相を解析し、ワイル点ペアを含んだ系で実現するランダウ準位構造について調べた。その結果、電子系のトポロジーは変化しないにも関わらず、磁場方向によって位相が0とπのどちらかの値を取ることと、その間の変化が不連続であることを発見した。また、ワイル半金属TaAsの単結晶を合成し、学外の研究グループに提供して共同研究を進めている。 この他にも、キャリア密度を調整したラシュバ型伝導体の単結晶を合成し、東大物性研強磁場施設において量子極限状態の電気伝導特性について研究を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ワイル点ペアを含んだ系のランダウ準位構造についての実験的研究が、当初の計画通り進行した。その結果、磁場方向に依存してベリー位相が不連続に変化することが明らかとなり、当初予想していなかった新たな発見があった。また、空間反転対称性の破れたPbTaSe2の超伝導状態についてもNQR測定により明確な結論を得ることができた。熱起電力の測定からこのノーダルライン半金属において初めて明瞭な量子振動を観測することに成功した。さらに、複数種類の磁性ワイル半金属の大型単結晶の合成にも成功し、磁気構造の影響を受けた電気伝導特性を観測した。この他にも、ラシュバ型伝導体単結晶のキャリア密度の制御も行い、本研究課題で対象とするスピン分裂キャリアを含む様々なバルク単結晶の合成に成功している。これらを用いて、物質中のワイル・ディラック粒子の電場や磁場に対する応答やそれに基づいた現象の発見に向けて詳細な研究を進めていける環境が整った。
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Strategy for Future Research Activity |
希土類元素を含む磁性ワイル半金属単結晶について、阪大強磁場センターで55テスラまで電気抵抗率の測定を行い、非相反電気伝導やカイラルアノマリーなどの観測に取り組む。また、磁化測定から磁気構造を決定して、電気伝導特性との関係について研究を進める。これにより、磁性体中のワイル粒子の電場・磁場応答についての知見を得るとともに磁気構造の変化を介した電気伝導特性の制御性について明らかにしていく。さらに、熱起電力やネルンスト効果についてその大きさや磁場依存性を測定し、ワイル粒子固有の性質について検出することを目指す。 また、ラシュバ型伝導体について量子極限状態での電気伝導特性を解明する。さらにキャリア密度の最適化により超伝導の発現も目指す。 これらを遂行することにより、空間反転対称性の破れた物質中のスピン分裂キャリアによる量子現象についての理解を進展させる。
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[Presentation] 角度分解光電子分光で観測されたTaAsのTa終端における電子構造2019
Author(s)
密岡拓心, 岡本陽平, 溝川貴司, 村川寛, 駒田盛是, 横井滉平, 酒井英明, 花咲徳亮, E.F.Schwier, 島田賢也, 生天目博文
Organizer
日本物理学会2018年秋季大会
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[Presentation] PbTeにおける“Diracness”の評価とその圧力依存性2019
Author(s)
秋葉和人, 三宅厚志, 酒井英明, 片山敬介, 村川寛, 花咲徳亮, 鷹岡貞夫, 中西良樹, 吉澤正人, 小林達生, 徳永将史
Organizer
日本物理学会2018年秋季大会
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[Presentation] キャント型反強磁性体BaMnSb2におけるバルク半整数量子ホール効果の観測2019
Author(s)
藤村飛雄吾, 酒井英明, 近藤雅起, 栗原綾佑, 三宅厚志, 徳永将史, 木田孝則, 萩原政幸, 鶴田圭吾, 村川寛, 花咲徳亮
Organizer
日本物理学会2018年秋季大会
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[Presentation] 角度分解光電子分光によるTaAsの電子構造2019
Author(s)
島岩泰暉, 密岡拓心, 村川寛, 駒田盛是, 横井滉平, 酒井英明, 花咲徳亮, 有田将司, E.F. Schwier, 島田賢也, 生天目博文, 溝川貴司
Organizer
日本物理学会第74回年次大会
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[Presentation] p型/n型SnSeにおける外部圧力を利用したバレー構造と熱電特性の制御2019
Author(s)
西村拓也, 酒井英明, 森仁志, 秋葉和人, 臼井秀知, 越智正之, 黒木和彦, 三宅厚志, 徳永将史, 上床美也, 片山敬介, 坂本拓也, 村川寛, 花咲徳亮
Organizer
日本物理学会第74回年次大会