2018 Fiscal Year Annual Research Report
First-principles understanding of topological material properties and materials design
Publicly Offered Research
Project Area | Frontiers of materials science spun from topology |
Project/Area Number |
18H04227
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山内 邦彦 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (00602278)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | トポロジカル物質 / 第一原理計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、B01「トポロジーと対称性」実験班と連携し、角度分解光電子分光(ARPES)で得られたトポロジカル物質の電子構造を解明することを目的として、様々な物質の第一原理電子状態計算を遂行している。研究は予定通りに進んでおり、H30年度はトポロジカル物質と他物質との近接効果を調べるため、電荷密度波を示すTaS2上に蒸着されたBi薄膜、さらに、高温超伝導体であるBi2Sr2CaCu2O8上に蒸着されたBi薄膜の電子状態についての共同研究について成果を発表した。さらに、実験との共同研究と並行して、理論先行型の新物質開発を継続して行っている。1つには、トポロジカル絶縁体同士のヘテロ接合を想定したシミュレーションを進めた。代表的なトポロジカル絶縁体であるBi2Se3やBi2Te3などの原子層を重ねたヘテロ構造を設計し、様々な組み合わせの中からトポロジカル表面状態であるディラックコーンがエネルギーギャップ中に現れる理想的な積層パターンを得た。そのような表面状態が得られる条件として、各物質のスラブの仕事関数の違いが重要であることが分かった。また、アンチペロブスカイト構造を示すマンガン化合物のノンコリニア磁性相に着目し、巨大異常ホール効果を示す反強磁性体の物質設計を行った。その結果、Mn局在スピンから形成される多重極子の磁気対称性が磁気双極子と同じ既約表現に属する際に異常ホール効果が有限となり、その値はバンドフィリングおよびスピン軌道相互作用の大きさに大きく依存することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画で予定されていた実験班との連携による物性評価は順調に進展している。実験班の佐藤宇史教授とは毎月数回E-mailなどで議論を行っており、H30年度は数回東北大で打ち合わせを行った。特に上記に挙げたBi薄膜の共同研究は予想以上に速く進展した。Bi 薄膜は膜厚や基板によって構造を大きく変えることが知られており、黒燐構造に類似した構造やハニカム構造など多彩な構造をとり得る。本研究では様々な構造歪みを考慮した100以上の構造でバンド計算を行い、ARPES測定で得られたバンド構造を良く再現する結果が得られた。それを基に、トポロジカル絶縁体とCDW物質との近接効果、さらに、トポロジカル絶縁体と超伝導体の近接効果であるマヨラナフェルミオンの可能性について議論を行い、共著論文が2本発表された。加えて、ディラック半金属 ZrSiSについてもバンド計算を進めてARPES測定結果と比較を行っており、現在論文投稿準備中である。理論先行型の物質設計も学生の研究協力などによって予定通り行われている。昨年より継続して行っていたトポロジカル絶縁体同士のヘテロ接合に関するシミュレーションは、修士学生の助力のもと、様々な物質の組み合わせで表面バンドを計算して調べた結果、物質の仕事関数が表面バンドとバルクバンドのエネルギー差を産むという包括的な理解を得ることができた。最後に、磁気多極子と巨大異常ホール効果について、博士学生と研究を進めており、東北大金研の鈴木通人准教授に研究協力を仰ぎ、アンチペロブスカイト構造をもつマンガン化合物の様々な組成で異常ホール効果の計算を行った。現在これらの結果をまとめて学術論文への投稿を準備している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も実験班との連携を深め、新物質の電子状態を計算で明らかにし、実験結果と比較することでトポロジカル物性の微視的機構を明らかにしていく。現在のところ、ワイル半金属であることが示唆されているホイスラー合金のバンド計算を予定しており、とくに、非磁性相で現れる三重縮退点が表面バンドにどう寄与するかをスラブ模型の計算で明らかにしたい。また、計算資源に余裕があれば、ホイスラー合金に含まれる希土類の磁性を考えた計算を行い、磁性とワイル半金属物性の関係について議論したいと考えている。計算主導のトポロジカルヘテロ構造の設計では、新たに修士学生・博士学生に研究協力を依頼し、トポロジカル物質間の接合だけではなく、範囲を拡大して、トポロジカル物質とスピンバレー系半導体との接合、トポロジカル物質と磁性体との接合、二次元物質への電場印加によるトポロジカル物性の制御、など様々な系を対象にしたシミュレーションを行い、新規物性の実現を目指したい。なかでも、スピンバレー結合を示すMoS2は非磁性であるが空間反転対称性の破れによってブリルアンゾーンの角でスピン分裂が許されており、スピンバレーホール効果の応用が期待されている。トポロジカル物質との接合界面では、このようなスピンバレー結合にトポロジカル物性が付与され、バルクバンドでのスピン分裂に加えてエッジ状態のスピン分裂が生じ、新しいスピン伝導現象が現れるのではないかと予想している。計算シミュレーションで良い結果が得られれば、実験班にフィードバックを行い、新物質・新物性の検証を依頼する予定である。
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] Ultrathin Bismuth Film on High-Temperature Cuprate Superconductor Bi2Sr2CaCu2O8+<CE><B4> as a Candidate of a Topological Superconductor2018
Author(s)
Natsumi Shimamura, Katsuaki Sugawara, Sukrit Sucharitakul, Seigo Souma, Katsuya Iwaya, Kosuke Nakayama, Chi Xuan Trang, Kunihiko Yamauchi, Tamio Oguchi, Kazutaka Kudo, Takashi Noji, Yoji Koike, Takashi Takahashi, Tetsuo Hanaguri, and Takafumi Sato
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Journal Title
ACS Nano
Volume: 12
Pages: 10977-10983
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Magnetic structural unit with convex geometry: A building block hosting an exchange-striction-driven magnetoelectric coupling2018
Author(s)
Kenta Kimura, Yasuyuki Kato, Kunihiko Yamauchi, Atsushi Miyake, Masashi Tokunaga, Akira Matsuo, Koichi Kindo, Mitsuru Akaki, Masayuki Hagiwara, Shojiro Kimura, Masayuki Toyoda, Yukitoshi Motome, and Tsuyoshi Kimura
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Journal Title
Phys. Rev. Mater.
Volume: 2
Pages: 104415/1-12
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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