2018 Fiscal Year Annual Research Report
トポロジカル結晶絶縁体薄膜における電界誘起量子伝導制御
Publicly Offered Research
Project Area | Frontiers of materials science spun from topology |
Project/Area Number |
18H04229
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
吉見 龍太郎 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 基礎科学特別研究員 (40780143)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 物性実験 / トポロジカル結晶絶縁体 / 輸送特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、トポロジカル結晶絶縁体SnTe薄膜を対象に、量子異常ホール状態と絶縁体状態の間の相転移を電場で制御し、巨大抵抗変化として観測することである。量子異常ホール効果発現のためには、強磁性交換相互作用による表面状態のギャップ形成とギャップ内へのフェルミ準位制御が必要である。研究初年度である本年度はSnTeのフェルミ準位制御を試みた。分子線エピタキシー法によってSnTeにPbやInをドーピングした薄膜を合成し輸送特性の変化を調べた。まず、Pbをドーピングすることで薄膜の抵抗が増加し正孔濃度が単調に減少する振る舞いを観測した。Pbドーピングは欠陥濃度制御だけでなくバンド絶縁体であるPbTeへのトポロジカル相転移も引き起こすため、両者の効果を分離しキャリヤ制御効果だけを議論するためにPb濃度x=0.3-0.6の組成を選んでInをドーピングした。Pb濃度によってIn濃度依存性が大きく変わり、Pb濃度が高いつまりバンド絶縁体側の組成ではInによって絶縁体的な抵抗の温度依存性を見せるのに対し、Pb濃度が低いトポロジカル結晶絶縁体側の組成ではInをドープしても金属的な抵抗を維持することを見出した。上記の振る舞いは、Pb濃度によってバンドギャップ内にギャップレスな表面状態を有するトポロジカル結晶絶縁体から表面状態のないバンド絶縁体へと転移していることを示唆する。 今後、強磁性交換相互作用を導入して表面状態のギャップ形成を試みる。強磁性絶縁体薄膜との近接相互作用が乱れを導入しないギャップ形成の手法として有効である可能性があるため、試みる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
トポロジカル結晶絶縁体における量子異常ホール効果を観測するための準備段階としてSnTe薄膜でフェルミ準位制御を達成したため。
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Strategy for Future Research Activity |
トポロジカル結晶絶縁体の表面状態に強磁性的な交換相互作用を導入する。その手法として、これまでトポロジカル絶縁体で行われてきた磁性元素のドーピングによる薄膜の強磁性化だけでなく、強磁性絶縁体薄膜とトポロジカル結晶絶縁体を接合することによる近接相互作用由来のギャップ形成も試みる。
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