2018 Fiscal Year Annual Research Report
Advanced stereoselective catalysis on the composite metal reaction sphere
Publicly Offered Research
Project Area | Precise Formation of a Catalyst Having a Specified Field for Use in Extremely Difficult Substrate Conversion Reactions |
Project/Area Number |
18H04237
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
荒井 孝義 千葉大学, 大学院理学研究院, 教授 (80272483)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 触媒的不斉合成 / 金属錯体 / 反応場 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は光学活性ビスアミノイミノビナフトール配位子と酢酸亜鉛からなる亜鉛三核錯体(tri-Zn)を開発し、触媒的不斉ヨードラクトン化を高収率、高立体選択的に達成してきた。本年度は、tri-Zn錯体を用いる触媒的不斉ヨードラクトン化について遷移状態解析を行い、その触媒サイクルを明らかにした。さらに本触媒系を基盤として、触媒的不斉非対称ヨードラクトン化へ研究を展開した。 NMR実験ならびにESI-MS解析から、tri-Zn錯体を用いる触媒的不斉ヨードラクトン化反応は、tri-Zn錯体の外側に位置する酢酸イオンが塩基性を有し、基質のカルボン酸が亜鉛カルボキシレートとなって反応が進行することが示唆された。一方、NISを用いるヨードラクトン化は、ヨウ素(I2)の添加によって著しく加速される。さらに、tri-Zn錯体とNIS-I2が1:1の相互作用を有することもUV-Vis解析によって示された。これらのことを基に、DFT計算による遷移状態解析を行った結果、基質の亜鉛カルボキシレートはNIS-I2試薬によって活性化され、NISは配位子と水素結合を形成していることが示唆された。この遷移状態解析は、NISとI2を用いるヨードラクトン化において、オレフィンをヨウ素化するのはNISのヨウ素ではなく、I2であることを示している。 遷移状態解析の結果は、tri-Zn錯体が求核部位であるカルボン酸と求電子部位のハロニウムイオンの方法を立体的に制御できることも示している。そこで、対称な二つのアルケン部を有するカルボン酸基質に対して、tri-Zn錯体を触媒に用いてヨードラクトン化を行うと、高いジアステレオ選択性をもって反応が進行し、5員環ラクトンを高い不斉収率で得ることに成功した。この5員環ラクトンは、分子内に未反応のオレフィン部位を残しており、合成的有用性も高い化合物である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
我々が開発した光学活性ビスアミノイミノビナフトール配位子と酢酸亜鉛からなる亜鉛三核錯体(tri-Zn)は、 ひとつの金属錯体上 でイオン結合、水素結合、ハロゲン結合の 3 種が協働して高立体選択的な反応を促進する世界初の触媒となった。これは本新学術領域研究「精密制御反応場」が目指す重要な成果である。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究は順調に進捗している。 当初の計画に沿って、複数の金属をイオンを取り込んだ複核錯体を合目的に開発できるようになってきた。 現在、取り組んでいる分子間のヨードエステル化が実現すれば、安価で入手容易な原料から高付加価値化合物を得る高難度分子変換の確立となり、その有用性を示す合成展開とともに研究を推進、完成させたい。
|