2018 Fiscal Year Annual Research Report
Precise Formation of Dinuclear Organometallic Reaction Sites and their Application in Difficult Substrate Reductions
Publicly Offered Research
Project Area | Precise Formation of a Catalyst Having a Specified Field for Use in Extremely Difficult Substrate Conversion Reactions |
Project/Area Number |
18H04246
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大木 靖弘 名古屋大学, 理学研究科, 准教授 (10324394)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | モリブデン / 鉄 / ヒドリド / 二核錯体 / 還元反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
代表的な高難度還元反応の一つであるN2の還元を自然界で達成する酵素ニトロゲナーゼの活性中心は、二種類の遷移金属MoとFeを含むクラスター化合物であり、また最近の生化学研究からは、金属間を架橋するヒドリドを複数持つ活性種を生じた後にN2が捕捉されると考えられている。酵素の活性状態において重要な構成要素であるMo, Fe, 架橋ヒドリドを含み、かつクラスターとしての最小単位である二核錯体を、H30年度の本研究における合成標的とした。 選択的にMoとFeを連結するために、本研究では前駆Mo, Fe錯体の一方を酸、もう一方を塩基として用いることにした。多数のヒドリド配位子を持つMo(VI)ヒドリド錯体(C5Me4R)Mo(PMe3)H5 (R = Me, H)は、高原子価のMo(VI)中心を含むため、ヒドリド配位子の電子密度が十分に高くない。従って、塩基によりヒドリド配位子の一部をプロトンとして除去できると考えた。実際、強塩基として働く-N(SiMe3)2を配位子とする 半サンドイッチ型Fe(II)錯体Cp*Fe{N(SiMe3)2}2 (Cp* = C5Me5)を作用させたところ、Mo-Hの脱プロトン化が進行し、3つの架橋ヒドリドを持つMo-Fe二核錯体(C5Me5R)Mo(PMe3)(H)(m-H)3FeCp*が単離収率80%以上で選択的に生成した。得られた二核錯体は反磁性であったため、NMRスペクトルに基づいて同定し、X線結晶構造解析により分子構造を確認した。また、ヒドリドを重水素化した同位体標識実験とIRスペクトルを活用し、金属-ヒドリド伸縮振動も確認した。さらに、57Feメスバウアースペクトルを測定し、Mo-Fe錯体に含まれるFeが低スピンFe(II)状態であると帰属した。従って二核錯体の形式酸化数は、Mo(IV)-Fe(II)と見なされる。合成した二核錯体を触媒前駆体とする、触媒的なN2シリル化反応も検討を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画と設計通りに、Mo-Fe二核錯体の合成に成功し、種々の分光測定と結晶構造解析に基づいて同定した。さらに、合成した二核錯体がN2のシリル化反応を触媒することも見出しており、研究開始段階で掲げた目標は順調に達成しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
合成した二核錯体を触媒前駆体とする、触媒的なN2シリル化反応の反応条件を精査して最適化するとともに、反応機構に関する知見を得るために、N2関連基質と二核錯体の化学量論反応や、DFTに基づく反応の理論解析を検討する。
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Research Products
(11 results)