2018 Fiscal Year Annual Research Report
マクロサイクルを不斉反応場とするラジカル触媒の開発
Publicly Offered Research
Project Area | Precise Formation of a Catalyst Having a Specified Field for Use in Extremely Difficult Substrate Conversion Reactions |
Project/Area Number |
18H04256
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
橋本 卓也 千葉大学, 大学院理学研究院, 特任准教授 (20437198)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ラジカル反応 / マクロサイクル / 不斉触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
種々の動的共有結合を利用したマクロサイクルを検討する中で、Kuhnertらによって開発されたターフェニルジアルデヒドとシクロヘキサンジアミンからなる[2+2]環状分子に着目するに至った。同分子デザインの中にチオールを官能基として導入し、キラルマクロ空間の構築を試みた。その結果、ターフェニルジアルデヒド構造を有するチオールを部分構造として用い光学活性シクロヘキサンジアミンと混合することで、目的とする右図のようなマクロ構造体を収率よく合成することに成功した。得られたマクロサイクル触媒をビニルシクロプロパンとアルケンのラジカル[3+2]環化反応へと適用した。実際の反応ではチオールに対するUV光照射によるチイルラジカル発生を触媒活性種の発生手法とし、水によるマクロサイクルの反応系中での分解を防ぐ目的でモレキュラーシーブスを添加した条件を採用した。検討の結果、同マクロサイクル触媒にてビニルシクロプロパンとビニルアセトアミドの環化反応が12%eeの選択性で達成された。このことによりマクロサイクルが効果的な不斉場となりうることを示すことに成功したが、反応条件検討のみではこれ以上の選択性の向上は実現できなかった。そこで、金属錯体の添加によるマクロサイクルの構造安定化と不斉環境の拡張を図ることとした。まずいくつかのアキラルな金属種をスクリーニングしたところ、ルイス酸性の高い種々の金属トリフラートがエナンチオ選択性に効果を及ぼすこと、すなわちマクロサイクル触媒と錯形成がなされていることが確認された。現在のところもっとも優れた選択性を示す組み合わせは、金属錯体にも不斉源を導入した下図の2を添加することで60%を超える選択性が実現されている。今後はこの金属錯体を種々検討することにより、さらなる選択性の向上を図る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では既存の概念とは全く異なる不斉源であるマクロサイクルを利用した触媒的不斉合成法の開発を試みている。そのような選択性がそもそも発現するのか見当もつかないような状況の中、1年のうちに中程度のエナンチオ選択性が達成されているため順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
順調に進展していることから、この新たに見出されたマクロサイクル触媒でのエナンチオ選択性の向上を図る。検討の方針としては添加剤自体の不斉源を各種スクリーニングすることで、触媒のマッチ・ミスマッチを見極め、90%eeを超える高選択的触媒を達成する。
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