2018 Fiscal Year Annual Research Report
The formation of a radical reaction field near aromatic ring for extremely difficult alkylatios
Publicly Offered Research
Project Area | Precise Formation of a Catalyst Having a Specified Field for Use in Extremely Difficult Substrate Conversion Reactions |
Project/Area Number |
18H04262
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
西形 孝司 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (90584227)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アルキル化 / 銅触媒 / 鉄触媒 / 芳香族C-H変換 |
Outline of Annual Research Achievements |
以下に2018年度の実績概要をまとめる。 1.連続反応による芳香族C-H結合アルキル化:本研究ではラジカル反応を用いて芳香族C-H結合の第三級アルキル化が行えるかを検討することとした。まず、αブロモカルボニルから生じるラジカル種がオレフィンに優れた反応性を有することを利用して、連続的分子内C-H結合アルキル化反応を検討した。式1のような分子内に芳香環を有するメタクリルアミドを基質として用いると、ラジカル付加に続く分子内環化反応により2つの第四級炭素を有するオキシインドール誘導体を得ることができた。本反応は詳しい条件検討の結果、ppmレベル量の銅触媒の添加により効率的な高難度C-H結合アルキル化反応を達成できることが分かった(触媒回転効率は最高で48000) 2. ヘテロ芳香族C-H結合アルキル化反応:先の反応では、分子内反応によりC-Hアルキル化を達成したが、関連する分子間反応の確認は困難であった。この原因を理論計算を組み合わせて精査したところ、生じたαラジカル種が芳香族C-H結合を置換するのに十分長い寿命が維持できないことが示唆された。そこで、生じたαラジカル種に金属を配位させ活性種の寿命を意識した検討を試みた。その結果、鉄がαラジカル種に配位することで分子間ヘテロ芳香族C-H結合第三級アルキル化反応の開発に成功した。 3. 第三級アルキルラジカル種の有機銅種との直接的反応観測:本領域砂田グループ(高難度金属反応場化学)との共同研究により、従来は困難な第三級アルキル臭化物(αブロモカルボニル)との鈴木-宮浦型カップリング反応を開発した。本反応は、アルケニルホウ素と銅塩とのトランスメタル化で生じた有機銅種がαラジカル種と反応することで進行することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、金属近傍ラジカル反応場を駆使した第三級アルキル化反応の開発に主眼を置いている。現在までに、1. 連続反応による芳香族C-H結合アルキル化反応の開発、2. ヘテロ芳香族C-H結合アルキル化反応の開発、及び、3. 第三級アルキルラジカル種の有機銅種との直接的反応観測というように、順調に成果を創出している。芳香族C-H結合との反応や立体的に非常に込み入った反応部位へ様々な第三級アルキル基を導入するには、当初我々の予想通り、銅や鉄などの金属近傍ラジカル反応場が有効であることを確認できた。今後、さらに多様な基質に多様な反応パターンで第三級アルキル基を導入するための基盤を本年度は固めることができたため、現在までの研究進捗状況を「おおむね順調」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度に、第三級アルキルラジカル種を芳香族C-H結合に反応させる触媒として鉄が最適であることを見出した。この反応系では、鉄種がαブロモカルボニルから生じたアルファ-ラジカル種のカルボニルに配位することでラジカル種の寿命が延び、低反応性芳香族C-H結合と反応したと考えられる。2019年度は、この新たに発見した知見を活かして第三級アルキルラジカル種を、1)脱芳香族付加、及び2)ベータ位に置換基を有するオレフィンへの立体選択的付加脱離型反応の開発を試みる。 前者は、予備的な検討でフェノール誘導体(BHT類)に対して、脱芳香族型付加反応が室温で進行することを見出した。なお、本反応では、合成困難な連続第四級炭素中心が生成する。本系において鉄触媒と銅触媒のそれぞれで検討すると、銅触媒が良好な結果を与えることが分かっている。引き続き条件の網羅的研究、及び基質検討を行い最適な反応条件を整える。 後者は、ベーターアルキルスチレン類とαブロモカルボニルとの反応を鉄触媒を用いて行うと、E体選択的生成物を得ることに成功した。本系は、シス及びトランス体のどちらのベーターアルキルスチレン類を用いても同一のE体を与えることが分かったため、引き続き本系の検討を行う。内部オレフィンに対する第三級アルキルラジカル付加は、立体的に非常に難しいため、2018年度に見つけた鉄-カルボニル相互作用によるラジカル種の長寿命化を利用して、本系の体系化を試みる。 さらに反応の進捗を見ながら、立体的に込み入った芳香族C-H結合に反応させるために、窒素配位子などの配向部位を有する基質を反応検討に用い、より難易度の高い反応の確認を行う。具体的には、アニリド誘導体に多座窒素配位部位を配置し、鉄や銅触媒とうまく相互作用できるようにすることで、芳香族C-H近傍で高濃度のラジカル種を生成できる反応場を創成する。
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Research Products
(10 results)