2018 Fiscal Year Annual Research Report
Control of electron wave entanglement in solids
Publicly Offered Research
Project Area | Science of hybrid quantum systems |
Project/Area Number |
18H04284
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
山本 倫久 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, ユニットリーダー (00376493)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 量子細線 / 量子ドット / 量子相関 / 量子情報 / 近藤効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、電子波-電子波結合系や電子波-電子スピン結合系における量子もつれの電気的制御に取り組むが、当年度は電子波-電子スピン結合系の実験のみを集中的に進めた。これは、研究代表者の東京大学から理化学研究所への異動と装置移設に伴う冷凍機の運転中断を見越した予定変更である。 電子波-電子スピン結合系の実験では、ファブリーペロー干渉計と接続した量子ドットに奇数個の電子(局在スピン)を閉じ込め、局在スピンと伝導電子との間の多体の量子もつれ状態(スピン一重項)である近藤雲の広がりを電気伝導実験によって検証した。近藤雲がファブリーペロー干渉計全体に広がると、スピン一重項結合の強さに相当する近藤温度が干渉によって変調される。本実験では、電気伝導の温度依存性によって近藤温度を評価し、近藤温度がファブリーペロー干渉によって変調される様子を観測した。実験では、この近藤温度の変調具合が、理論的に予測される近藤雲の大きさと干渉計の長さの比だけによって普遍的に決定されることを見出した。また、この振る舞いは数値繰り込み群法による理論計算との良い一致を示した。この実験結果により、近藤雲の大きさが理論予測に従って近藤温度の逆数に比例することを初めて確認できた。近藤雲の広がりの検証実験は50年も前から様々な方法で行われてきたが、成功例はこれまでなかった。本実験の成果は、近藤効果の最も重要な性質を初めて明らかにしたもので、歴史的な価値が高いと考えられる。 上記の実験、解析と並行して、冷凍機の理研への移設と立ち上げ及び電子波-電子波結合の実験の準備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究代表者の異動に伴い、電子波-電子波結合の実験はできなかったが、電子波-スピン結合の実験が当初の想定以上に順調に進み、これに関して決着をつけることができた。近藤雲の広がりは、固体中の多体状態を記述する最も重要なパラメータのひとつである。これを検証する実験は50年も前に始められ、様々な方法が試みられてきたが成功例はなかった。この検証実験に初めて成功した成果が固体物理分野に与えるインパクトは非常に大きく、今後の新たな進展も見込まれる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、電子波-電子波結合の実験を進める。干渉計試料の作製と電流雑音測定系の準備ができ次第、実験に取り掛かる。 電子波-電子スピン結合に関しては既に目標を達成しているが、論文投稿及び電子波を介した長距離のスピン結合についての考察を行う。
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Research Products
(14 results)