2018 Fiscal Year Annual Research Report
テラヘルツ近接場による超高速ナノ空間電子マニュピュレーション
Publicly Offered Research
Project Area | Science of hybrid quantum systems |
Project/Area Number |
18H04288
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
武田 淳 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (60202165)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | テラヘルツ / 近接場 / 電子操作 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、超高真空中で動作するナノスケールかつサブサイクルの時間分解能を持つテラヘルツ走査型トンネル分光(THz-STM)技術を開発する。単一トンネル接合において、所望のTHz近接場を創り出しその場で観測する処方箋を構築し、トンネル電子を自在に量子操作する近接場分光技術を確立することを目指す。 今年度は、広帯域THz位相シフタを組み込んだ光学系を構築し、THz遠方場のキャリアエンベロープ位相(CEP)を0~2πで任意に調整した上でサブサイクルでトンネル電流を計測した。実際に計測したトンネル電流と遠方場を仮定したときの電流値・CEPのずれをRLC 等価回路シミュレーションにより再現することにより、探針形状によらずに任意のTHz 近接場をその場計測し造り出すことに成功した。また、Mach-Zehnder干渉光学系により、トンネル電流の時間分解計測を行い、任意のトンネル電流バーストを生成できることを示した。 構築した超高真空時間分解THz-STMの最初の実証実験として、レーザー光照射に伴うカルコゲナイド半導体薄膜の相変化ダイナミクスを計測した。レーザー光を探針に集光して得られた近接場をカルコゲナイド半導体の結晶相へ導入し、表面構造の観察とトンネル分光を行った。その結果、ある一定強度以上のレーザー光を照射したとき、閾値特性を持って結晶相からアモルファス相へ10ナノメートル四方程度の大きさで相変化を生じることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、(1)THz 近接場のその場観測とキャリアエンベロープ位相(CEP) 制御による任意のTHz近接場の発生手法の開発が実行できた。また、(2)Mach-Zehnder干渉系によるサブサイクルTHz近接場分光により、トンネル電流バーストを自在に創り出す処方箋を構築できた。これらの成果は、著名学術誌に掲載され、いくつかの権威ある国際会議の招待講演に繋がった。以上の点から、本研究は順調に進展しているものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
超高真空時間分解THz-STMの実証実験として、引き続きカルコゲナイド半導体薄膜の相変化ダイナミクスの観測を行う。現在、レーザー光照射に伴うナノスケール相変化を観測できているので、実際にTHz波を導入して結晶相からアモルファス相、アモルファス相から結晶相に相変化するかどうかを体系的に調査する予定である。
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Research Products
(19 results)