2018 Fiscal Year Annual Research Report
スピン波で接続したハイブリッド量子スピン系の実現
Publicly Offered Research
Project Area | Science of hybrid quantum systems |
Project/Area Number |
18H04289
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
AN TOSHU (安東秀) 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (70500031)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ダイヤモンドNV中心 / スピン波 / 磁気共鳴 / スピン注入 |
Outline of Annual Research Achievements |
先ず、ダイヤモンド中の窒素―空孔複合体中心(NV中心)とスピン波のハイブリッド構造をプラットフォームとして用い、NV中心をスピン波で接続した長距離離れた(最大、数ミリメートル)ハイブリッド素子動作の制御に取り組んだ。この目的で、スピン波が伝搬するイットリウム鉄ガーネット(YIG)の試料上にプラチナ薄膜を蒸着し電流を印加することによりスピン波へスピントルクを印加してスピン波を変調し、この変調信号をNV中心により計測する研究を進めた。結果として、スピン波信号の変化は計測されたが期待される電流極性の反転による変調の反転は計測されなかった。得られた結果について、電流の生成する磁場の影響等について考察した。並行して、その他のスピン波注入法であるスピン注入発振についても具体的な素子の作成法について検討を行った。 もう一つの研究目的である、ダイヤモンドNV中心を複数のNV中心から単一のNV中心へと変更し、単一の量子ハイブリッド系を実現するための装置開発の準備を進めた。具体的には、イオン注入法による単一NV中心の作成法の検討、準備とアンチバンチング法による単一発光源であることを確認するパルス蛍光計測システムの整備を進めた。イオン注入装置は北陸先端科学技術大学院大学に設置されている装置を用いたが、微量のイオン注入を行うことが難しいため、酸化膜をダイヤモンド基板上に予め蒸着して実質のイオン注入量を減らす方法を採用する検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
スピン波とダイヤモンド中のNV中心のハイブリッド系を変調し制御する方法と、スピン注入トルクを印加してスピン波を変調する方法を試みた。スピン波の変調は観測されたが期待された印加スピントルク極性の違いによる変調信号の極性変化は見られなかった。これは印加電流が生成するエルステッド磁場の影響等が観測されている可能性がありさらなる考察が必要である。 ダイヤモンドNV中心を複数のNV中心ではなく単一のNV中心として、単一のスピン系とスピン波からなる量子ハイブリッド系を実現するための装置開発の準備を進めた。NV中心が単一であることは単一光源であることを確かめれば良くこれを確認するためのアンチバンチング計測のためのシステムの装置選定を行った。また、単一NV中心の作成法についても酸化膜をダイヤモンド基板上に予め蒸着して実行的なイオン注入量を減らす方法を採用する検討を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
先ず、スピン波励起の方法にマイクロ波アンテナではなくプラチナ膜に流した電流により生成するスピン流スピントルクを用いてスピン波を励起する方法を試みたが、今後、スピン注入によりスピン波そのものを励起する方法を採用し、スピン流-スピン波-NV中心によるハイブリッド構造の実現を目指す。この際には、プラチナ中に電流を印加してスピンホール効果によるスピントルクを磁性体へ印加してスピン波を発振させる方法を採用する。 また、上記の系を単一のNV中心で実現することを目指す。そのための単一NV中心の作成をイオン注入法により試み、時間相関単一光子計数モジュールを購入して整備し、単一光源であることをアンチバンチング法により確認する。 上記のスピン流―スピン波―単一NV中心の系においてパルス計測システムを整備し、DC磁場であるゼーマン分裂計測に加えてAC磁場に相当するラビ振動、ラムゼーフリンジ、スピンエコー信号を計測し、AC磁場計測によりコヒーレントにNV中心を励起できることを実証する。
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