2018 Fiscal Year Annual Research Report
Control of valley and spin degrees of freedom in transition metal dichalcogenides by poralized field
Publicly Offered Research
Project Area | Science of hybrid quantum systems |
Project/Area Number |
18H04294
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
毛利 真一郎 立命館大学, 理工学部, 助教 (60516037)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 遷移金属ダイカルコゲナイド / 分極場 / 窒化ガリウム / 原子層 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、窒化物半導体にMoS2やグラフェンなどの原子層材料を組み込んだ構造を作製し、窒化物半導体の誘電分極を利用した原子層材料の光電子物性制御を目指している。本年度は、上記目的達成へ向け、 1.ファンデルワールスエピタキシーによるグラフェン上への窒化物半導体成長技術の確立 2. MoS2/GaNヘテロ構造の基礎光物性の解明 の2点を中心に研究を進めてきた。 主な成果としては、MBE法を用いたメタルカバー成長法と呼ぶ新しい結晶成長手法を見出し、グラフェン上への窒化ガリウム薄膜の成長に成功した点があげられる。グラフェン上への窒化ガリウム成長では、グラフェンの濡れ性の悪さもあって薄膜成長が難しく、これまでも限られた成長条件でしか薄膜成長したという報告がない。特に、MBE法で単層グラフェン上に成長した場合、ナノ結晶の集合体が得られることが多く、その解消が課題であった。また、成長過程でグラフェンにプラズマダメージが残ることも大きな問題であった。そこで、我々は、均一な核生成サイトの導入が可能なECR-MBE法の利用と、成長初期過程におけるガリウム被覆によるグラフェンへのダメージ軽減という2つの手法を利用して、グラフェンをある程度保護しつつ、薄膜成長することが可能であることを実証した。特に、GaN基板上では残留微結晶の少ない良好な薄膜成長が可能であることが示された。これは、リモートエピタキシーによって基板情報がグラフェンで遮断されないことを示唆している。 また、MoS2/GaNヘテロ構造の発光特性の解明へ向けた研究も進めている。自立GaN基板上に剥離・転写した単層MoS2薄膜の発光特性を調べたところ、+c面と-c面上に転写した場合とでその発光特性がわずかに異なることを見出した。特に、-c面上では電子ドープが促進されトリオン発光が支配的になることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画では、初年度に、圧力印加下での発光測定実験までを行う予定であったが、進展が遅れている。その最大の理由は、ダイヤモンドアンビルの仕様決定に時間がかかり、納期も想定より長く(3か月)かかったことにある。最終的に、アンビルの納入が2月末までずれ込んだ。顕微分光系の構築はすませており、現在、構築した顕微分光系にアンビルを組み込む作業を進めている。 また、ファンデルワールスエピタキシーによる結晶成長についても、MBE装置の不良による修理期間を必要としたために計画が若干遅れている。当初計画では、グラフェン上への窒化ガリウム成長に加え、MoS2上への窒化ガリウム成長も初年度に進める予定であった。しかし、結晶成長装置のセルの修理が必要となり、長期間MBE装置が使用できない期間が生じたことで、MoS2への結晶成長については十分な回数の成長が行えていない。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は大きく分けて以下の2つの研究を進める予定である。 まず、昨年度確立したグラフェン上への窒化ガリウム薄膜成長手法を応用し、MoS2上への窒化ガリウム薄膜成長を行い、GaN/MoS2/GaNダブルへテロ構造の作製を行う。同時に、現在用いているECR-MBE装置に加え、RF-MBE装置を利用することで原子層へのプラズマダメージのさらなる軽減も目指す。 さらに、GaN/MoS2ヘテロ構造および、GaN/MoS2/GaNダブルへテロ構造の低温バレー分極測定とその制御へ向けた圧力印加下で発光測定を行う。すでに、GaN/MoS2ヘテロ構造において自立GaN基板の方位によってMoS2の励起子発光特性が大きく変化することを見いだしている。本年度は、京都大学エネルギー理工学研究所の篠北先生、松田先生の協力のもと、低温でのバレー分極測定・バレー分極寿命を進め、そのメカニズムの解明を進める。特に、自立GaN基板の向きに対する依存性から、誘電分極の影響についての評価を行う。また、立命館大学で構築中の圧力印加下での発光測定を行い、分極場を用いたバレー分極制御・励起子物性制御が可能かどうかを解明する。また、MoS2以外の遷移金属ダイカルコゲナイドや窒化ガリウム以外の窒化物半導体混晶とのヘテロ構造も作製し、分極場の影響がどのように変化するかについても検討する。
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