2018 Fiscal Year Annual Research Report
Kondo effect and superconductivity in correlated systems with electron and hole Fermi surfaces
Publicly Offered Research
Project Area | J-Physics: Physics of conductive multipole systems |
Project/Area Number |
18H04305
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
星野 晋太郎 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (90748394)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 超伝導 / 半金属 / 近藤効果 / フラストレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
ランタノイドやアクチナイドを含む化合物中では、局在f電子の持つ多極子自由度が近藤効果を通して伝導電子と量子力学的に相互作用することにより、非従来型超伝導に代表される興味深い現象を引き起こす。通常の相関電子系における超伝導は、強いクーロン斥力を避けるために空間的に異方的なクーパー対の形成が起こる。一方で最近、CeCu2Si2やUBe13では空間等方的なフルギャップ超伝導を示唆する結果が実験的に得られた。本研究では、重い電子系特有のフルギャップ超伝導発現機構の理論的提案を目指し、半金属的な伝導バンド構造をもつ近藤格子を解析した。 理論手法としては、近藤系で基底状態を記述できることが確立している平均場理論を用い、超伝導秩序変数や熱力学量を調べた。低エネルギー極限のモデルを解析した結果、複合体ペア振幅という3体の束縛状態に由来する物理量が超伝導状態を特徴づけていることを明らかにした。これは局在f電子の自由度を巻き込んだ形をしているために、通常の超伝導状態とは異なり電磁応答に影響を及ぼすことができない。そこで、本研究ではさらに高エネルギーの効果(伝導バンドのカットオフエネルギー)を摂動的に取り込むことで、通常のペア振幅が誘起され、それがマイスナー応答を導くことを明らかにした。このような結果はタイトバインディングモデルを直接解析することでも得られると考えられるが、フェルミ面付近に注目した低エネルギ―理論に基づくことで直観的な物理的描像を確立することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画では半金属的な伝導バンドを持つ近藤不純物系を調べ、さらに近藤格子において平均場理論を構築することを予定していた。本研究では、不純物系がマルチチャンネル不純物近藤系と同等であることを示すことや、研究実績で記述したように平均場理論を近藤格子に対して適用し特徴的な物理的描像を確立することができた。さらに、磁場下の超伝導体で実現するような非一様な系に対する理論構築も進んでおり、当初の計画よりも研究が進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究において空間一様な系における平均場理論を確立することができたので、非一様な系の解析を行う。具体的にはEilenberger方程式やGinzburg-Landau理論を導出し、それら駆使して量子渦に対して物理量の計算を実行する。また、平均場理論は弱相関に基づく理論であるので、その逆の極限である強相関極限からの理論を構築することや、動的平均場理論を用いて有効理論の妥当性を裏付ける。さらに、どのような実際の物質系で実現しうるかを、第一原理計算を駆使して検証する。
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