2018 Fiscal Year Annual Research Report
Odd-parity multipole effects for antiferromagnetic magnon spin currents
Publicly Offered Research
Project Area | J-Physics: Physics of conductive multipole systems |
Project/Area Number |
18H04311
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
塩見 雄毅 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (10633969)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | スピン流 / 反強磁性体 / 奇パリティ多極子 / スピントロニクス / 熱流 |
Outline of Annual Research Achievements |
熱流による非相反スピン流応答について共同研究者と理論的な考察を行い、論文を発表した(Phys. Rev. B 98, 020401(R)(2018))。対称性のよい通常の磁性体では温度勾配の方向をひっくり返しても同じ大きさのスピン流が流れるが、空間反転対称性が破れていると非相反的なスピン流応答が許される。MnPS3およびa-Cu2V2O7に対する実験パラメータを用いた具体的な非相反応答の値の見積もりを行うと、非相反応答の効果は非常に小さいものとなり、実験的観測には実験系の工夫が必要と判断している。 また、おなじく低対称磁性体で期待される熱流誘起スピン偏極の効果についても、共同研究者と理論的な裏付けについて議論を続けている。これまでの研究では、電気磁気効果とのアナロジーから対称性としては許されると考えられるものの、微視的機構を考察すると単純な結晶構造を有する低対称磁性体では発現しない可能性が示唆されている。テスト実験の遂行と並行して、候補物質や具体的な実験系を含めて理論的な考察を引き続き行う。 加えて、新学術領域の強みを活かした領域内共同研究も精力的に行った。研究代表者の異動も一つの契機として、磁気圧電効果の研究を領域内の研究者と共同でスタートさせ、既に論文も一編発表した(Phys. Rev. Lett. 122, 127207 (2019))。磁気圧電効果とは、磁性金属における圧電効果であり、通常絶縁体や半導体でしか観測されない圧電効果を金属系で観測したことは基礎物理のみならず応用物理としても意味がある。磁気圧電効果も磁性体における対称性の破れに起因する効果である。本新学術領域の主題とする磁性体における奇パリティ多極子効果の代表例の一つであり、その観測は大きな意義を有する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画内容の実験的な開拓に先立ち、共同研究者と理論的な考察を行い、論文を一編発表した。継続して理論的考察を深めており、今まで想定していなかった方向性への研究発展が生まれようとしている。また、新学術領域の強みを活かした領域内共同研究も精力的に行っている。磁気圧電効果の研究を領域内の研究者と共同でスタートさせ、既に論文も一編発表した。研究代表者の異動に伴い研究環境が変わることとなったが、新学術領域の強みを活かして研究を精力的に進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
低対称磁性絶縁体における熱流誘起スピン偏極の効果について、共同研究者と理論的な考察を続ける。現象の理論的記述はおおむね達成されており、発現のための条件も明らかになってきている。第二年度は、具体的な候補物質や実験系を考案し、実験的な開拓を狙う。 今年度に領域内共同研究を行うことで世界で初めて観測した磁気圧電効果の研究も、物質開拓や測定系の改善により研究発展させる。領域内で積極的に試料提供および理論的な援助を受け、引き続き実験研究を継続して行う。
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Research Products
(10 results)