2018 Fiscal Year Annual Research Report
Theoretical study of new quantum phenomena related to valence transition
Publicly Offered Research
Project Area | J-Physics: Physics of conductive multipole systems |
Project/Area Number |
18H04326
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
渡辺 真仁 九州工業大学, 大学院工学研究院, 准教授 (40334346)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 価数転移 / 臨界価数ゆらぎ / 準結晶Yb15Al34Au51 / 量子臨界現象 / CeCu2Si2 / 超伝導 / CeAu2Si2 / CePd2Si2 |
Outline of Annual Research Achievements |
価数転移由来の新規量子現象の理論研究に取り組んだ。主な成果として、 (1)量子臨界準結晶Yb15Al34Au51がYbの価数転移の量子臨界点に位置していることを理論的に示した。(2)圧力下のCe化合物でCeの価数転移の臨界点と超伝導転移温度の関係を理論的に示し、実験との比較を系統的に行った。 以下に各概要を述べる。 (1)最近準結晶Yb15Al34Au51のAlとAuを同族元素のGaとCuで系統的に置換した試料Yb15(Al1-xGax)34(Au1-yCuy)51が作成され、Ybの価数の格子定数依存性が観測された。興味深いことに、量子臨界性を示す準結晶Yb15Al34Au51はYbの価数が急激に変化し始める点に位置しており、量子臨界性の発現にYbの価数が重要な役割を果たしていることを示している。この現象の出現機構を理論的に明らかにするため、準結晶と共通のTsai型クラスターが体心立方格子に配列した格子構造をもつ近似結晶Yb14Al35Au51におけるYbの4f電子と5d電子、Alの3p電子からなる拡張周期アンダーソン模型にスレーブボゾン平均場理論を適用して、価数転移の量子臨界点近傍におけるYbの価数の格子定数依存性を計算した。その結果、格子定数の減少に伴いYbの価数が急激に減少し、実験で観測された結果と整合する振る舞いが現れた。この量子臨界点近傍でのYbの価数の非対称な変化は、基底状態相図における価数量子臨界点の混成依存性に由来することがわかった。これにより、上述した実験結果は、非従来型の量子臨界現象を示す準結晶Yb15Al34Au51がYbの価数転移の量子臨界点に位置していることを示していることがわかった。 (2)圧力下のCeCu2Si2, CeAu2Si2, CePd2Si2, CeRhIn5などのCe化合物において、低温の電気抵抗率の圧力依存性から、Ceの価数転移の臨界温度を見積もり、臨界温度と超伝導転移温度の関係を系統的に明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非従来型の量子臨界現象を示す準結晶Yb15Al34Au51の電子状態を記述する有効模型として、1/1近似結晶Yb14Al35Au51における有効ハミルトニアンを構築してYbの価数の格子定数依存性を計算した結果、実験と整合する結果を得ることができた。今後これをもとに準結晶および圧力下の近似結晶の新規物性の理論解析を進めることができるので、研究は順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までに構築した有効電子模型をもとに理論研究をさらに推進していく。それと同時に新学術領域の研究会に参加して、関連する実験および理論研究者と議論を行い、価数転移由来の新しい量子現象の理論を構築・発展させていきたいと考えている。
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