2018 Fiscal Year Annual Research Report
Charge order and heavy fermion due to orbital-dependent hybridization in rare-earth compounds
Publicly Offered Research
Project Area | J-Physics: Physics of conductive multipole systems |
Project/Area Number |
18H04328
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
椎名 亮輔 琉球大学, 理学部, 教授 (30326011)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 希土類化合物 / 磁性 / 価数ゆらぎ / 磁場 / 電荷秩序 / 近藤格子 / 量子相転移 / 結晶場 |
Outline of Annual Research Achievements |
当年度は、以下の2課題について、取り組みを行なった。 (1)軌道依存型混成モデルにおけるキャリアドーピング効果と電荷秩序の理論 SmRu4P12は17Kで明瞭な金属絶縁体転移を示し、低温領域で複雑な秩序相を形成する。本計画以前に、pf混成に基づく有効ハミルトニアンを導入し、磁場中の実験結果が磁性・電荷・多極子の複合秩序状態の形成により広く説明できることを示してきた。これまでの解析はpバンドの半充満条件のもとに行なわれたが、本年度は特に、pバンドの電子密度変化に対して安定な秩序状態の解析を、平均場近似により行なった。非半充満バンドでは、磁性・電荷複合相がゼロ磁場でも安定化し、その領域がキャリア密度の増加とともに顕著に広がることが示された。SmRu4P12の置換系やSmPt2Si2の部分無秩序状態などのゼロ磁場での実験結果との比較についても議論した。 (2)SmおよびEu化合物における価数揺らぎと重い電子状態の解析 Sm化合物に見られる磁場鈍感重い電子状態の起源を巡って近年活発な研究が続けられてきた。この現象に対して、Smイオンの2価と3価の価数ゆらぎに着目し、現実的なdf混成を考慮した解析を進めてきた。本計画では、簡単化された有効不純物モデルの枠内で、有限磁場におけるフェルミ液体効果に関して、数値くり込み群による解析を行なっている。当年度は、磁場効果のくり込み群計算の基本部分についてプログラムコードを作成し、磁化の磁場依存性の計算を行なった。現在、磁場中比熱の計算を行なっており、予想に反して、磁場中でも量子転移が存在することを示唆する結果を得ている。また、Eu化合物について、f7およびf6配位の特徴を考慮した有効ハミルトニアンを考案した。価数揺らぎと磁性発現の機構について、現在、平均場近似により解析を行なっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題(1)で解析した拡張近藤格子モデルは、もともとSmRu4P12の金属絶縁体転移と磁場効果に対して導入されたものではあるが、普遍的な特徴があり、より広い関連現象を持つものと思われた。そこで、本年度は、絶縁相からずれた非半充満バンドのケースを集中的に解析した。その結果、非従来型複合秩序が広い電子濃度領域に現れることを示すことができ、また現実物質における関連現象について議論することができた。そして、それらの結果を日本物理学会で口頭発表し、J. Phys. Soc. Jpn.誌に出版することができた。 課題(2)について、Sm系に対する2軌道不純物アンダーソンモデルに対する数値くり込み群解析の際に、大規模数値計算が必要になるが、当年度の取り組みにより、ゼロ磁場の計算プログラムの高精度化および有限磁場へのプログラムの拡張の2点について進展があった。それにより、量子相転移の臨界性の詳細な解析が可能となり、また磁場中での物理量の計算も可能となった。これらについて、国際磁性学会(ICM2018)での口頭発表および日本物理学会でのシンポジウム講演にて成果発表を行なった。 Eu化合物の実験研究が近年集中的に行なわれているが、中間価数領域において磁性、価数ゆらぎ、重い電子などが複合化した極めて複雑な現象が生じるため、理解が遅れていた。本年度の取り組みの中で、Eu系のf電子配位の特徴を考慮した有効ハミルトニアンを導出することができ、上記の複合現象の理解へ向けて、今後の研究の基礎を築くことが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
課題(1)に関して、拡張近藤格子モデルの一般電子密度での秩序状態の平均場解析に際して、これまでの2幅格子秩序をより一般化し、長周期構造あるいはストライプ構造が安定化する可能性を調べる。課題(2)に関して、有限磁場中での数値くり込み群による比熱、エントロピー、磁化等に対する広いモデルパラメータでの解析を進める。特に、磁場中での量子相転移の有無を解明し、存在する場合はその特徴を明らかにする。Eu化合物の有効ハミルトニアンに対する平均場解析を進め、実験との比較によりモデルの改良を行っていく。
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