2018 Fiscal Year Annual Research Report
Study of quantum gravity theory by polarization observation of high energy gamma rays
Publicly Offered Research
Project Area | Why does the Universe accelerate? - Exhaustive study and challenge for the future - |
Project/Area Number |
18H04335
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
郡司 修一 山形大学, 理学部, 教授 (70241685)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ガンマ線バースト / 高エネルギーガンマ線 / チェレンコフ望遠鏡 / 偏光 |
Outline of Annual Research Achievements |
ある種の量子重力理論では、真空中をフォトンが伝搬する際に、右円偏光と左円偏光の回転速度が変化する可能性を示唆している。この違いからフォトンの直線偏光の振動方向が伝搬中に少しずつ回転し、そしてこの回転角がフォトンのエネルギーに依存する事が示唆されている。このような効果は非常に小さい事が予想されるため通常の実験では観測にかからないが、宇宙の遠方で生じるガンマ線バーストから来る電磁波を使えば、観測できる可能性がある。すでにガンマ線バーストから来る数10keVと数100keVのガンマ線の偏光方向を調べる事で、このような実験がなされており、上限値が得られている。もし、数keVと数10GeVのガンマ線でこの測定を行うと、今までに得られた上限値をさらに100億倍厳しいものにできる。 高エネルギーガンマ線の観測はチェレンコフ望遠鏡で現在可能だが、チェレンコフ望遠鏡を使って高エネルギーガンマ線の偏光方向を検出した事は無い。そこで高エネルギーガンマ線が大気中で起こす相互作用によって生じるチェレンコフ光から、高エネルギーガンマ線の偏光情報を取得できるのか原理的に明らかにすることが本研究の目的である。 そのため平成30年度は、エアーシャワーのシミュレーターであるCORSIKAで偏光したガンマ線を入射できるように改造し、そしてこのシミュレーターでシミュレーションを開始した。高エネルギーガンマ線は大気上空で電子対生成を起こし、電子と陽電子を放出する。この電子と陽電子が作るチェレンコフ光のリングを地上で観測すれば、高エネルギーガンマ線の偏光情報が得られるが、それと同時に2次粒子による数千倍のバックグランドが存在する。そのバックグランドを初期的なカットを使って排除し、現在100倍程度まで落とすことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では平成30年度に、偏光した高エネルギーガンマ線のシミュレーターを構築する事を目的としていた。そして実際にその目的は達成された。その意味では計画通り研究は順調に進展していると言える。 しかし思った以上に地磁気が電子と陽電子の飛跡を曲げ、それにより偏光方向の判別を難しくする事が分かった。そして予想通り、2次粒子が作り出すチェレンコフ光が非常に沢山存在する事も確認できた。この問題を解決しながら、研究を先に進める道筋はまだ十分できていないので、その意味では当初の計画以上に進展しているとは言えない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度には3つの事を予定している。1)まず最初は二次粒子によるチェレンコフ光のバックグランドをより沢山落とすカットを行う事である。現在はまだ1発1発のガンマ線に対してカスタマイズしたカットになっておらず、一律のカットを施している。これをカスタマイズする事を考えており、信号に対して10倍程度までバックグランドをこれで落とす事を目標としている。2)次にステップとしてはそれでも残ったバックグランドンの中から信号を見つけ出すために機械学習を導入する事である。そのためすでに平成30年度の終わりから機械学習を行う環境を整え始めている。そして機械学習を使う事で偏光情報を捉えることが原理的にできるのかを調べる予定である。3)最後にもしそれでもダメな場合は、仮に月面でそのような実験を行った場合の可能性を考えてみる。現在月ゲートウエイ構想というものが急ピッチで進んでおり、月面に検出器を置くことはそれほど馬鹿げた事では無くなってきている。月には磁場が存在しないため、最初にできた一次電子と陽電子の飛跡は曲げられず直進するため、その一次電子の放出するチェレンコフ光はきれいなパターンを示す。また月には大気が存在しないが、人工的な大気を置けば、チェレンコフ光が観測できるはずである。すぐには実現できないが、将来的に可能かどうかを研究する事も視野に入れる。
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Research Products
(2 results)