2018 Fiscal Year Annual Research Report
恒星質量原始ブラックホールの検証に向けた理論研究
Publicly Offered Research
Project Area | Why does the Universe accelerate? - Exhaustive study and challenge for the future - |
Project/Area Number |
18H04338
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
須山 輝明 東京工業大学, 理学院, 准教授 (20456198)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 原始ブラックホール / 重力波 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、3本の論文(“Ghost-free theories with arbitrary higher-order time derivatives”, “On the detectability of ultralight scalar field dark matter with gravitational-wave detectors”,”A Large Mass Hierarchy from a Small Non-minimal Coupling”)をまとめ上げ、査読付き学術誌に投稿した(2019年3月の時点で一本が掲載済)。また、7か所の国際研究会(その内5件が招待講演)、1か所の国内研究会、及び5か所でのセミナー発表(その内4件が招待)にて口頭発表を行い、これまでの研究成果の周知に努めた。また、原始ブラックホールに関する国際スクールでの講師を務め、原始ブラックホールの最先端研究の周知に努めた。 実際に観測されるブラックホール連星の合体頻度は、観測バイアスのせいで真の合体頻度とは異なる。この違いを議論している文献調査を行なった。その文献の結果を用いて、原始ブラックホール連星合体の質量平面上での疑似的分布を得た。次年度はこの疑似分布を使って、原始ブラックホール仮説を検証するには何個ほどの合体イベントを検出する必要があるかを明らかにする予定である。 また、論文発表に未だ至っていない別の研究として、原始ブラックホール連星の合体に伴う背景重力波の評価がある。そのような背景重力波は宇宙の放射成分として働き、宇宙の構造形成などに痕跡を残す。初期宇宙での原始ブラックホール連星の合体頻度を求め、現在の宇宙での重力波強度を計算し、将来の宇宙観測での検出可能性を求めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実際に観測されるブラックホール連星の合体頻度は、放射重力波強度が質量に依存することに起因するバイアスが生じるので、真の合体頻度とは異なる。この両者の合体頻度を結びつける手法の文献調査にあたり、その方法を適用して観測される合体頻度分布の疑似データの作成を行っている段階である。 また、本研究課題開始年にLIGO観測所がさらにブラックホール連星合体のイベントを報告した。このイベントの中には質量が太陽の50倍ほど重いブラックホールが含まれている。この重いブラックホールを含む連星系を、三重連星系の二重合体によって説明できる可能性に気付いた。このアイデアを定量的に評価するため、海外の共同研究者と三体系の数値シミュレーションを行っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
連星ブラックホールの質量分布に関する研究は、申請段階時の研究計画通りに進んでいるので、このまま計画通りに研究を進めていく予定である。質量平面上での疑似データ分布が作成できると、質量平面上を格子状に区切り、各微小領域での合体イベント数をカウントし、実際に観測される合体頻度分布を推定する。そして、初年度に得られた結果を使って、真の合体頻度の推定を行い、本研究の手法の原始ブラックホール仮説の検証における有効性を明らかにする。 これに加えて、重力波観測は急速に進展しており、研究初年度にも新たな連星ブラックホール合体イベントが報告された。その中には従来とは異なる解釈の必要性を迫ると思われるイベントもあり、そこから新しい知見が得られる可能性がある。科研費申請時の研究計画に加え、申請時には想定されていなかった観測データにも柔軟に対応していく方針を昨年度取ったが、今年度も同様の方針をとることにする。
|