2018 Fiscal Year Annual Research Report
ガンマ線と大規模構造のクロス相関による暗黒物質粒子の探査
Publicly Offered Research
Project Area | Why does the Universe accelerate? - Exhaustive study and challenge for the future - |
Project/Area Number |
18H04340
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
安藤 真一郎 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 客員科学研究員 (80791970)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 暗黒物質探査 / ガンマ線宇宙物理学 / 宇宙の大規模構造 / 銀河サーベイ |
Outline of Annual Research Achievements |
暗黒物質サブハローの解析的モデルを用いてガイア衛星のデータ解析結果の解釈を行なった。その成果は"A Gaia DR2 search for dwarf galaxies towards Fermi-LAT sources: implications for annihilating dark matter", Ioana Ciuca, Daisuke Kawata, Shin'ichiro Ando, Francesca Calore, Justin I. Read, Cecilia Mateu, Monthy Notices of the Royal Astronomical Society誌、480巻、 2284ページ、(2018年)として出版。 本研究計画の解析の骨組みとなるパワースペクトル解析を、IceCube実験によって検出された高エネルギーニュートリノのデータへの適用を行ない、その成果を"Angular power spectrum analysis on current and future high-energy neutrino data", Ariane Dekker, Shin'ichiro Ando, Journal of Cosmology and Astroparticle Physics誌、1902巻、 002、(2019年)として出版した。 暗黒物質サブハローによる対消滅ブーストの計算について、過去の研究を総括したレビュー記事を、エディターの依頼をうけ、Galaxies誌、特別号"Halo substructure boosts to the signatures of dark matter annihilation"へと投稿。現在査読中である。こちらのレビュー論文は"Halo substructure boosts to the signatures of dark matter annihilation", Shin'ichiro Ando, Tomoaki Ishiyama, Nagisa Hiroshima, arXiv:1903.11427 [astro-ph.CO]として公開済みである。 これらの成果を元に国際研究会TeV Particle Astrophysics 2018、COSMO 2018、Dark Ghosts 2018、日本物理学会等で多数講演。また領域シンポジウムにおいても進捗状況の報告を行なっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
銀河分布や重力レンズマップとガンマ線とのクロス相関を議論する上で、暗黒物質サブハローの存在を無視することはできない。前年度より構築を行なっていた解析的なサブハローのモデルがひとまず暫定的ではあるが完成したので、Galaxies誌の特別号のためのレビュー記事を依頼を受けて投稿した。また同モデルを用いることで、最新のガイア衛星データの解析結果に独自の解釈を与えることを試みた。具体的にはフェルミの未同定天体、特に暗黒物質サブハローの候補と先行研究で考えられている領域におけるガイアデータの解析を行い、サブハローの兆候を探した。その結果いずれにおいてもサブハローの証拠は見つからず、自身のサブハローモデルを用いることにより、全てのフェルミ未同定天体が暗黒物質サブハローであることを棄却することに成功した。 様々な銀河カタログや重力レンズマップとのクロス相関の解析を進めるため、まずはフェルミ衛星の検出ガンマ線データ解析を行った。とりわけ角パワースペクトルを計算し、その結果が先行研究と一致することを確認した。それと同時にクロス相関を取るための銀河カタログの選定を行い、データの抽出を行なっているところである。他方で重力レンズマップに関してはDark Energy Survey Collaborationとの共同研究を取る形で進めており、成果を論文にまとめているところである。 さらには本研究計画で得られた知見を生かし、高エネルギーニュートリノのデータ解析に適用した。これはこの分野にとっては新たな試みであり、分野を超えたあらたな視点の提供に一役買ったいうことができる。
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Strategy for Future Research Activity |
暗黒物質対消滅や各ガンマ線天体に対して、クロス相関関数の理論的予言を行う。しかしながら、ガンマ線天体の分布自体はまだまだ不明なことが多い。この不定性に関して、ガンマ線天体に関するハロー占有分布をいくつかのパラメータを用いてモデル化を行う。他波長からの情報も最大限活用し、リーズナブルなハロー占有分布をモデル化し、最も重要なパラメータをクロス相関のデータと照らし合わせることで不定性まで含めて決定していく。 暗黒物質対消滅に関しては、最小質量スケールまで含めた領域での暗黒物質サブハローの存在量や分布などが重要な物理量となってくる。ガンマ線へと対消滅を起こすような素粒子が暗黒物質であった場合、同時に宇宙の最小構造は地球質量かそれ以下にもなりうるという可能性が指摘されている。この最小質量サブハローの対消滅への影響をすでに構築済みの解析モデルを使って詳しく調る予定であるが、それがここでのクロス相関のシグナルとしてどう表れるのか、また、データから最小質量領域ハローに対する制限が得られるのか、といった疑問に関しても議論を進めていくことを計画している。とりわけ最小質量領域まで含めてサブハローが親のハローの中でどのように時間進化していくのかに関しては、最新の数値シミュレーションですら到達できない領域であり、本研究計画で提案しているガンマ線背景放射の観測が唯一無二の観測的プローブとなる。 これらの理論的進展を考慮に入れた上で、暗黒物質対消滅と天体成分に関するモデルパラメータを組み込み、パラメータ空間中の1点1点において、クロス相関関数を迅速に計算できるコードの開発を行う。それにより大きなパラメータ空間における解析を行うことが可能となる。理論計算コードの最適化に取り組み、研究全体の最終段階において、全データの包括的な解析と暗黒物質パラメータの決定をおこなう。
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Research Products
(14 results)