2018 Fiscal Year Annual Research Report
Exploring the origin of cosmic acceleration through weak lensing measurements of a Subaru wide-field galaxy survey
Publicly Offered Research
Project Area | Why does the Universe accelerate? - Exhaustive study and challenge for the future - |
Project/Area Number |
18H04350
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
宮武 広直 名古屋大学, 高等研究院(理), 特任助教 (20784937)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 観測的宇宙論 / 暗黒エネルギー / 暗黒物質 / 宇宙の大規模構造 / 弱重力レンズ効果 / 銀河自己相関関数 / 銀河団 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、すばる望遠鏡新超広視野主焦点カメラHyper Suprime-Cam (HSC)によるすばる望遠鏡戦略枠サーベイのデータを用いた弱重力レンズ効果の測定を通して、世界最高精度で宇宙の加速膨張の性質に制限を付けることである。 今年度は、Sloan Digital Sky Survey (SDSS) III / Baryon Oscillation Spectroscopic Survey (BOSS)の分光銀河カタログとHSCサーベイ初年度の銀河形状カタログを組み合わせ、銀河自己相関関数と銀河弱重力レンズ効果を測定することで、宇宙論パラメータに制限を付けるための準備研究を主に行なった。特に、高精度で宇宙論的情報を引き出すための理論モデルの構築及び、本理論モデルにおける系統誤差の評価を行ない、この系統誤差がSDSS-III / BOSSの銀河自己相関関数とHSC初年度の弱重力レンズ効果信号から期待される統計誤差に対して十分小さいことを確認した。 また、HSCサーベイ3年目までのデータを用いて弱重力レンズ効果を測定する準備として、3年目の銀河形状カタログの作成を開始している。特に、HSCの画像データの点拡がり関数の評価を行なった。 さらに、ACTPol宇宙マイクロ波背景放射望遠鏡でSunyaev-Zel'dovich効果を通して発見された銀河団の質量を、HSC初年度の銀河形状カタログを用いて測定した弱重力レンズ効果信号を通して推定する研究をまとめ、論文を出版した。 以上の研究に関する学会発表を国内外で行い、その中には複数の招待講演も含まれる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、本研究における最重要課題である理論モデルの構築を行なった。この理論モデルは異なる宇宙論パラメータを持つN体シミュレーションで測定された暗黒物質ハロー自己相関関数と暗黒物質ハロー-質量相互相関関数を、機械学習を用いてエミュレートしたDark Emulatorに基づいている。Dark Emulatorにおけるこれらの相関関数を、暗黒物質ハローにおける銀河分布の現象論的モデルを仮定して銀河自己相関関数および銀河弱重力レンズ効果に焼き直し、この理論モデルにおける系統誤差は、SDSS-III/BOSSにおける銀河自己相関関数とHSC初年度における銀河弱重力レンズ効果で予想される統計誤差に比べて十分小さいことを確認した。また、銀河サンプルの作成における系統誤差や、銀河弱重力レンズ効果における測光的赤方偏移や銀河形状測定などの系統誤差に対して、この理論モデルを用いた宇宙論パラメータ推定はロバストであることを確認した。以上の成果は、次年度に論文として投稿する予定である。また、次年度はこの理論モデルを用いて、実際のデータから宇宙論パラメータを制限する予定である。 HSC3年目の銀河形状カタログも順調に進んでおり、来年度半ばには宇宙論パラメータの精密測定に耐え得るカタログが出来上がる予定である。 また、本年度にまとめた銀河団の弱重力レンズ質量を測定する研究は、次年度に行う宇宙論パラメータの制限に銀河団の質量関数を組み合わせる際に、銀河団質量を較正するための準備研究と位置づけられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度が本補助金の最終年度となる。次年度は、本年度で構築した理論モデルと実際のデータを比較することにより、宇宙論パラメータに世界最高精度で制限を付けることを目指す。この結果は、理論モデルの構築と合わせて2編の論文として投稿する予定である。 本理論モデルを、宇宙論的弱重力レンズ効果や、銀河団弱重力レンズ効果を同時解析できるよう拡張する。これにより、理論的・観測的な系統誤差を抑えながら、HSCサーベイにおける大統計データを最大限活用することが可能となる。 HSC3年目の銀河形状カタログに関しては、点拡がり関数の評価の評価を引き続き行い、また、画像シミュレーションを用いた銀河形状の較正も行う予定である。本銀河形状カタログは次年度半ばでの完成を目指している。その上で、銀河自己相関関数、銀河弱重力レンズ効果に加えて、宇宙論的弱重力レンズ効果や、銀河団弱重力レンズ効果などの他の観測量も測定し、上で述べた拡張した理論モデルを用いて宇宙の加速膨張の性質にさらに強い制限を付けることを目指す。
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Research Products
(17 results)