2018 Fiscal Year Annual Research Report
原始揺らぎの非ガウス性の符号で検証する弦理論の基本原理
Publicly Offered Research
Project Area | Why does the Universe accelerate? - Exhaustive study and challenge for the future - |
Project/Area Number |
18H04352
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
野海 俊文 神戸大学, 理学研究科, 特命助教 (30709308)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 弦理論 / インフレーション / 弱い重力予想 / 散乱振幅 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は弦理論の基本原理である解析性やユニタリー性,因果律をインフレーション宇宙という高エネルギーで検証することである.そのために,ドジッター時空における相関関数の解析性やユニタリー性,それから従う有効相互作用の正値性条件を導出することを目指している.
本年度は,ドジッター時空を考える前の準備として,運動量空間における共形場理論の4点関数の基底を構成した.中間状態の質量殻上で散乱振幅が因子化することがよく知られているが,運動量空間の共形相関関数の非解析的な部分は同様の因子化を起こす.この因子化の要請に基づいて,運動量空間におけるスカラー4点関数の基底を一般のスピンを持つ中間状態に対して構成した.この結果は反ドジッター時空における4点関数の基底としてもそのまま用いることができ,同様の対称性を持つドジッター時空への拡張の困難も少ないと考えられる.以上の結果を論文として出版し,現在ドジッター時空への拡張を行なっている.
また,ユニタリー性や因果律を研究している過程で,弦理論から動機付けられる「弱い重力予想」の証明にこれらの原理が有用であることを見出した.「弱い重力予想」は量子重力理論において質量電荷比に上限値が存在することを予言する.特に,インフレーションや暗黒物質などの現象論模型に非自明な制限を与えるため,理論と現象論の両側面から近年注目を集めている.今回,極限ブラックホールの質量電荷比への量子補正を考え,ユニタリー性や因果律を用いることで,弱い重力予想が予言する質量電荷比に対する不等式を極限ブラックホールが満たすことを示した.この結果は量子重力に基づく現象論への基礎を与える.この結果をまとめた論文が現在査読中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ドジッター時空を考える前の準備として行なった運動量空間における共形相関関数,反ドジッター時空の相関関数,に関する研究が計画通り順調に進んでいる.また,研究を進める過程で,ユニタリー性や因果律を弱い重力予想の証明に応用するという新たな方向性も見出した.以上から,当初の計画以上に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は,初年度の運動量空間における共形相関関数に関する結果をドジッター時空の相関関数に拡張する.ドジッター時空におけるインフラトンの相関関数の基底を与え,高エネルギーでの振る舞いに仮定をおくことで正値性条件を導出したい.また,これらの解析を重力子を含む相関関数にも応用する.
加えて,初年度に見出した「ユニタリー性や因果律を弱い重力予想の証明に応用する」方向性も合わせて進めていきたい.これまでに得られている結果を弦理論に普遍的に現れるディラトンを含む系,一般のブラックブレーン,アクシオンに対する弱い重力予想などに拡張していく.特に,アクシオンに対する弱い重力予想はアクシオンを用いたインフレーション模型の実現可能性に直結するため,本新学術領域の研究目的とも合致する.
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