2018 Fiscal Year Annual Research Report
物理定数恒常性測定の飛躍的精度向上に向けた、原子核のレーザー励起の実現
Publicly Offered Research
Project Area | Why does the Universe accelerate? - Exhaustive study and challenge for the future - |
Project/Area Number |
18H04353
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
増田 孝彦 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 特任講師 (90733543)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | トリウム229 / 物理定数恒常性 / 微細構造定数 / 核共鳴散乱 |
Outline of Annual Research Achievements |
加速宇宙の謎に関わる可能性のある微細構造定数恒常性の測定感度を大幅に改善すると期待されるのがトリウム229原子核の極低エネルギー核異性体準位である。本年度は放射光X線核共鳴散乱法を用いたトリウム229の原子核第二励起準位への励起に成功し、これによって極低エネルギー核異性体を能動的に生成できるようになった。また測定データを詳細に解析することで、原子核第二励起準位に関わる各種パラメータ(寿命、エネルギー幅、崩壊分岐比など)を決定した。 入射X線のエネルギースキャンを実現するためには、毎秒150メガバイトに渡るデータ量を、その場解析を行いつつデッドタイムフリーで数日間取得し続けるという測定システムとデータストレージが必要であった。本研究課題で必要なストレージと解析能力を備えたシステムを構築した。 今後の真空紫外光分光に向け重要なのが真空分光器の波長較正方法の確立である。分光器による測定結果が真の波長とずれていると正確なエネルギーが特定できない。また波長較正は現場での測定時に同時に行うことが望ましいため、混み合ったビームライン中でも較正できる小型なシステムが必要であった。炭酸ガスの直流グロー放電による一酸化炭素分子の蛍光ピークを用いることで、比較的簡易なシステムでも1ナノメートルを超える精度で較正できることを確認した。蛍光ピークは150から200ナノメートルに分布しており、この付近に信号がくれば問題なく波長較正できることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高性能核共鳴散乱測定システムを構築し、今年度の目標であった核共鳴散乱の観測に成功した。これによってトリウム229の超低エネルギー核異性体準位を能動的に生成することができるようになった。また測定データを詳細に解析することで、原子核第二励起準位に関わる各種パラメータ(寿命、エネルギー幅、崩壊分岐比など)を決定した。 次のステップである真空紫外光発光観測についても測定感度見積もりや基礎データ取得を進めている。測定で重要な波長較正について炭酸ガスを用いた手法が有用であることが確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
第二励起準位を経由した核異性体の生成に成功したため、今後は核異性体からの真空紫外光発光の観測を推し進める。まずは光電子増倍管を使った高感度測定で初観測を目指す。その後分光器を用いて波長を決定する。その際には本年度開発した波長較正システムを用いる。波長が決定し次第、レーザーの設計に着手する。
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Research Products
(12 results)