2018 Fiscal Year Annual Research Report
原始ブラックホール形成過程の精査とその観測的検証
Publicly Offered Research
Project Area | Why does the Universe accelerate? - Exhaustive study and challenge for the future - |
Project/Area Number |
18H04356
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
横山 修一郎 名古屋大学, 基礎理論研究センター, 助教 (80529024)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | インフレーション / 原始ブラックホール / 重力マイクロレンズ / 超弦理論 / 原始密度揺らぎ / 非ガウス性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「原始ブラックホール」に焦点を当て、ボトムアップ的アプローチでインフレーション理論に迫ることを目的とする。交付申請書の「平成30年度研究計画」には、形成期の精査として「原始ブラックホールのスピン分布の精査」、新たな観測的制限の評価として「重力マイクロレンズ効果を用いた系外惑星探査データの原始ブラックホール量制限への応用」を挙げた。実際には、観測的制限の評価についての論文をarXivに投稿することができた。その論文では、OGLE-IVによる銀河バルジ方向のマイクロレンズデータを用いて、木星質量程度の原始ブラックホール量に対して従来よりも厳しい制限を得ることに成功した。さらに、興味深い結果として、OGLE-IVによって報告された6個の超短期間マイクロレンズ事象を地球質量程度の原始ブラックホールにより説明可能であることも示した。論文はその後4月にPhysical Review D誌に掲載された。さらに研究計画には記載していなかったが上記の観測的制限に基づき、暗黒物質、LIGO重力波イベント、地球質量ブラックホールを同時に説明可能なインフレーション模型に関する研究を行った。こちらは4月にarXivに論文を投稿している。本模型は、近年話題となっている超弦理論におけるSwampland conjectureとも相性がよく、超弦理論に基づいた新たなインフレーション模型構築の方向性を示したという点で非常に重要であると考える。 形成期の精査に関しては、研究の都合上、研究計画に記載したスピン分布に関する研究ではなく、平成31年度計画として記載した空間分布に関する研究を進めた。結果として、原始ブラックホールの種となる初期密度揺らぎがガウス分布からずれることで原始ブラックホールはクラスタリングする可能性を示した。本研究は現在論文としてまとめており、平成31年度中に投稿予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画に記載した、原始ブラックホール量に対する観測的制限に関する研究と、形成期の精査に関する研究を同時に遂行することができた。観測的制限に関する研究は、すでに論文として発表、形成期の精査に関しては、原始ブラックホールのクラスタリングについての論文を準備している段階にある。さらには、研究計画には明記していなかった、現在の原始ブラックホール量に関する制限と整合性のとれたインフレーション模型の構築に関する研究も進めることができたことにより、本研究は当初の計画以上に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のとおり、研究を進めて行く都合上、形成期の精査に関して、申請書に記載した平成31年度計画の内容を平成30年度に進めた。よって、平成31年度は、当初のスピン分布に関する研究を進める。クラスタリングに関する研究を先に進めたおかげで、そのアイデアをスピン分布にも応用することができる見通しがたったため、スピン分布に関する研究も問題なく遂行できると考えている。さらに、形成期の精査に関しては、クラスタリングに関する研究をもとに様々なタイプ(非ガウス性を持った初期密度揺らぎや、原始磁場の効果など)の初期条件に対して原始ブラックホールの形成量の見積もりに関する研究も進める。これは当初の研究計画にはなかったが、クラスタリングに関する研究により派生的に生まれたものであり、本研究は更なる成果を得ることが期待できる。 観測的制限に関する研究は、当初の計画通り「原始ブラックホールの宇宙再電離史への影響」に焦点を当てて進める。
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Research Products
(11 results)