2018 Fiscal Year Annual Research Report
Robust estimate of dark halo structures in the Galactic dwarf galaxies toward the future dark matter indirect detections
Publicly Offered Research
Project Area | Why does the Universe accelerate? - Exhaustive study and challenge for the future - |
Project/Area Number |
18H04359
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
林 航平 東京大学, 宇宙線研究所, 特別研究員 (20771207)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 暗黒物質 / 矮小銀河 / すばる広視野多天体分光器 / チェレンコフ望遠鏡アレイ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は銀河系矮小銀河の中でも明るい矮小銀河について、すばる超広視野カメラHSCでの測光データを用いた恒星分布構造決定を行ってきた。本研究での解析モデルは先行研究で行われてきた手法と異なり、矮小銀河のメンバー星とコンタミネーション星の確率分布を掛け合わせた尤度関数を用いることで、コンタミネーション星の影響を同時に考慮した解析モデルとなっている。さらに、これまでの矮小銀河恒星分布推定ではプランマーモデルなど形状が決まったモデルを採用しており、詳細な恒星分布に対する議論はされていなかった。本研究では恒星分布の詳細を調べるために分布の形状も変えた解析モデルを構築した。この解析モデルをHSCで観測した銀河系矮小銀河の1つである小熊座矮小銀河の測光データに適用した。その結果、先行研究と比べて銀河の典型的な大きさが2倍近く大きい事が明らかになった。これはHSCの広い視野と深いデータ、そして新たな解析モデルによって得られた新たな結果である。 一方で国際共同研究によって、竜骨座矮小銀河の最新の測光・分光データが得られ、それを用いた恒星分布推定を行った。その結果、外側で変化が急激な恒星分布が最も観測を再現している事が明らかになった。この結果を動力学解析モデルに取り入れ、暗黒物質分布推定を行ったところ、暗黒物質密度プロファイルが中心部で弱いカスプ構造を持ち、さらにガンマ線を用いた暗黒物質探査で重要な物理量となるJ-factor値がこれまでよりも大きく見積もられ、将来のガンマ線観測の候補天体となる事がわかった。 またPFS大規模サーベイのデザイン構築においても、本年度はHSCデータを用いた詳細な観測デザイン構築を行うことができた。具体的にはより効率良く観測ができる、分光ファイバー配置をシミュレーションから計算し、どの領域を何回観測すべきかという最適解を示唆することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
銀河系矮小銀河の恒星分布の形状はその暗黒物質分布の推定に強く影響するため、これを精度良く決定するための測光データと統計的解析手法の構築は当該研究において重要研究の1つに位置づけられる。本年度は、小熊座矮小銀河についてHSCの測光データを用いた恒星分布解析を行い、その結果を得ることができた。その一方、他の銀河系矮小銀河についてはHSCデータを用いた解析がまだ完了していないが、解析手法が確立しているためHSCで観測された全ての銀河系矮小銀河の恒星分布推定は次年度中にその成果が得られると考えている。よって計画は概ね順調であると評価している。 また、HSCデータではないが竜骨座矮小銀河の広く深い測光データを用いて恒星分布推定を行い、その結果を用いて暗黒物質分布の推定及び恒星分布の暗黒物質分布に対する影響を議論する事が出来たのは、当該研究が順調に進んでいると評価できると考えている。 2022年に観測開始予定のPFS大規模サーベイに向けた、サーベイデザイン構築についても概ね順調に進んでいる。特に本年度はPFSサーベイの重要ターゲット天体の1つである銀河系矮小銀河の小熊座矮小銀河についてより詳細な観測計画を提案する事が出来た。具体的にはPFSの4ポインティング観測から最も多くの星を効率よく観測できるファイバー配置をシミュレーションから計算し、具体的な数字を示した。また、矮小銀河だけでなく他のターゲット天体であるアンドロメダ銀河ハロー領域についても同様の解析を行い、この天体についても具体的なサーベイデザインを提案する事が出来た。一方で恒星分布解析と同様、小熊座矮小銀河以外の天体についてはそのシミュレーションが完了していないため、今後順次サーベイデザインを提案していく予定である。よって、計画以上の進展までは見込めないが計画通りの進展であると評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度では、小熊座銀河系矮小銀河のすばるHSC測光データを用いた恒星分布推定を行ったが、すばるHSCで観測された全ての銀河系矮小銀河についての解析がまだ完了していないため、次年度も継続して恒星分布推定を行い、その結果が暗黒物質分布推定に及ぼす影響について詳細に調べていく計画である。また今後は、構築した解析モデルを様々な矮小銀河に適用していきたいと考えている。特に暗黒物質がより豊富な超低輝度矮小銀河の恒星分布について、既存の測光データカタログを用いてその詳細を調べていく予定である。これによって、銀河系にある様々な星質量の矮小銀河について、その構造的特徴を捉えることが可能になる。 また、銀河系矮小銀河の動力学解析モデルの拡張も行いたい。具体的には、これまで一定としてきた暗黒物質分布の非球対称性や矮小銀河メンバー星の速度分散非等方性パラメータに半径依存性を持たせ、より現実的な動力学モデルを構築する。さらにこれまでの解析モデルでの結果と比較することで、モデルの拡張が暗黒物質分布にどうインパクトがあるのかを調べる。 PFSのサーベイデザイン構築についても、継続して行っていく予定である。特に次年度では、観測ターゲットとなっている全ての銀河系矮小銀河について具体的なサーベイデザインを提案する。さらにPFS大規模 サーベイは銀河系矮小銀河を含めた銀河考古学サーベイだけでなく、宇宙論・遠方銀河サーベイとのコヒーレントな観測計画を構築する必要があるため、PFSチームと協力して進めていく予定である。 また次年度からCTAの日本コンソーシアムの正式メンバーとなり、より本格的に銀河系矮小銀河ガンマ線観測計画の立案に着手できる。具体的にはCTAの性能から想定されるガンマ線感度曲線を評価し、PFSから想定される暗黒物質分布の制限を用いて暗黒物質対消滅断面積にどの程度制限を与えることができるのかを調べる。
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Research Products
(19 results)