2018 Fiscal Year Annual Research Report
セラミックス焼成技術を応用したミリ波光学素子の開発
Publicly Offered Research
Project Area | Why does the Universe accelerate? - Exhaustive study and challenge for the future - |
Project/Area Number |
18H04360
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Research Institution | National Institute for Fusion Science |
Principal Investigator |
高山 定次 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (40435516)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | マイクロ波背景放射 / ミリ波光学素子 / マイクロ波加熱 / 透過率向上 |
Outline of Annual Research Achievements |
アルミナ焼結体とアルミナ単結晶であるサファイアでは、誘電損失が4ケタも違う。その理由は、結晶粒界で引き起こされる散乱の影響である。最近著しい進展を見せている透光性アルミナは、その結晶粒界で起こる散乱を減らすために、結晶粒界サイズをナノサイズにしてアモルファス(ガラス化)するか、異常粒成長させて大きな結晶粒界にすることで粒界の量を減らす二つの方向性で研究されている。マイクロ波加熱は短時間焼結や低温焼結が可能で複雑な形状でも均一加熱できる。そのためマイクロ波焼結を透光性アルミナに適用すると、焼結時間の短縮による結晶粒界の微細化が期待でき、通常の焼結方法よりもより微結晶な焼結が期待できる。一方、異常な粒成長の手法の場合は、焼結助剤がマイクロ波で選択的に加熱され異常粒成長が促進されることが期待できる。そこで、まずはじめに各種透光性アルミナ材料のGHz帯域の透過率測定を行い、特に以下の項目に着目して、最適なアルミナ原料の選定を行った。 A) 誘電損失に対する原料粉末純度の影響評価 原料粉末純度の違う2種類のアルミナ材料の透過率を評価した。 B) 誘電損失に対する焼結粒界サイズの影響評価 結晶粒界サイズの異なるアルミナ試料の透過率を測定し、結晶粒界サイズの透過率など光学特性への影響を評価した。 その結果、マイクロ波背景放射の観測帯域であるGHz帯域では、不純物は透過率に影響が大きく、微結晶化により透過率が向上する知見が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
CMB偏光観測装置の光学系素子としてアルミナが用いられる。CMB偏光を観測するための地上観測実験POLARBEAR2やBICEP3ではアルミナがレンズやフィルター材料としてすでに採用されており、一部ではすでに観測に用いられている。アルミナの利点はミリ波での誘電損失が小さく、また熱伝導率が高いため、極低温で用いる光学部材としては最適である。CMB観測においても熱的及び光学特性の利点があるほか、耐放射線の観点でも有力であるが、透過率などの光学特性はアルミナの単結晶であるサファイアほどには達していない。そこで、最近技術進歩の著しい透光性アルミナの焼結手法を適用することで、アルミナの透過率の向上を図ることを目的としている。 本年度は、代表的な透光性アルミナ材料について透過率測定を行った。その結果、微細結晶アルミナ焼結体でサファイアの透過率に近い材料が見つかった。しかしながら、アルミナ原料は種類が多く、これまでに透過率評価を行った材料はごく一部に限られるために、やや遅れているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、アルミナ光学部品の軽量化手法を確立するために、以下の実験を予定している。 A) 多孔質アルミナの製作手法の検討 有機ポリマー分散法を検討する。アルミナ粉末と有機物粉末(ポリマーなど)を混ぜ合わせた原料粉末を成型し、本焼結すると有機ポリマーは燃焼・ガス化して離散するので、有機ポリマーの場所が気孔として残り、高気孔率のアルミナ焼結体が得られる。この手法は、ボールミーリングの混合時間回転速度を変えることで有機ポリマーサイズを制御でき、気孔を制御できる。用いる有機ポリマーは、強誘電ポリマーで知られているポリフッ化ビニリデン(PVdF)を考えている。マイクロ波が強誘電ポリマーを選択的に加熱するので、より発泡性が高まると考えた。有機物粉末は焼結時に熱分解・燃焼でガス化し、気孔のみが残るので、多孔質アルミナが製造できる。 多孔質アルミナ成形のさらなる検討として,ビトリファイド(ガラス)砥石製造技術を活用したアルミナ多孔体成形を考えている。ビトリファイド砥石の気孔形成剤として使用される,メラミンシアヌレート(※昇華性の物質で,脱脂時の成形体破壊を防止できる)を複合化して成形を行う。ビトリファイ砥石の製造技術は日本が世界に誇る技術であり,1mを超える大きさの砥石が実際に生産されている。京都市産業技術研究所の研究協力者は,砥石製造会社との深いつながりもあることから,将来の大型成形まで見据えた実験条件を構築可能である。 B) 無反射加工の加工性評価 本提案で開発する低損失アルミナ及び軽量化アルミナに対して前年度の開発技術であるモスアイ加工の適用性を検討する。
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Research Products
(1 results)