2018 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙初期の加速膨張を検証可能にする革新的な超伝導検出器の開発
Publicly Offered Research
Project Area | Why does the Universe accelerate? - Exhaustive study and challenge for the future - |
Project/Area Number |
18H04361
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
南 雄人 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 博士研究員 (80788240)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 超伝導検出器 / 放射線 / 宇宙線 / アルファ線 / TES |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、「宇宙線に強い検出器の開発」が一番の目的であった。検出器は、LiteBIRD衛星計画で使われる予定の超伝導転移端センサー (TES)ボロメータ検出器を想定した。TESボロメータ検出器の載っているシリコン基板に入射した宇宙線がフォノンを生成し、フォノンが宇宙線のエネルギーをTESボロメータ検出器に届けてしまう。フォノンの伝達を減らすことで宇宙線の影響を軽減する二つのアイデアを実証しようと試みた。アイデアを実装したTESボロメータ検出器の作成をアメリカのカリフォルニア大学バークレー校の共同研究者に依頼し、これを用いて放射線試験をおこなうこととした。 本年度は、宇宙線を模擬したアルファ線照射試験のための冶具の設計と、高エネルギー加速器研究機構の冷凍機で、TESボロメータ検出器の信号を読み出せるようにすることが目的であった。 アルファ線照射試験のための冶具は問題なく作成できたが、TESボロメータ検出器の読み出しシステムの構築にはトラブルが生じた。数十マイクロメートルスケールの細いアルミニウムワイヤーを用いて、TESボロメータ検出器と読み出し基板をワイヤーボンドする必要があったが、TESボロメータ検出器の素材との相性が悪く、高性能なワイヤーボンディングマシンが必要になったためである。幸い、同研究機構の別グループのマシンを借りることができ、ボンディングが成功した。最終的に二つの目的は達成し、冶具の製作もおこなった。さらに、放射線を照射したデータの取得にも成功した。 また、アルファ線をシリコン基板に照射した際に落とすエネルギーの量を、計算機を用いてシミュレートした。実験データの解析がまだ終わってはいないが、カリフォルニア大学バークレー校でおこなわれた同様の試験において、シミュレーション同様の振る舞いが確認できたため、うまく実験セットアップを再現できたと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ワイヤーボンディングにかかわるトラブルに加えて、読み出し装置のトラブルが一つあった。こちらはいまだ解決していないが、研究を進める上では大きな問題ではない。
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Strategy for Future Research Activity |
さらに複雑なセットアップで、アルファ線照射試験をおこなう。これまでに取得したデータもあわせて解析をおこなう。さらに、実験のセットアップを再現できるシミュレーションを用意し、放射線のエネルギー依存性や照射位置依存性などの詳細を比較する。これらの結果をもとに、国際会議等で発表する。さらには、実験結果を宇宙空間での宇宙線の分布へと外挿して、宇宙線のTESボロメータ検出器への影響をシミュレートできるようにする。
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Research Products
(3 results)