2018 Fiscal Year Annual Research Report
CMB偏光観測望遠鏡のための偏光補正装置の開発
Publicly Offered Research
Project Area | Why does the Universe accelerate? - Exhaustive study and challenge for the future - |
Project/Area Number |
18H04362
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高倉 理 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特別研究員 (30811525)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 宇宙物理 / 宇宙マイクロ波背景放射 / 偏光観測 |
Outline of Annual Research Achievements |
宇宙マイクロ波背景放射(CMB)Bモード偏光ゆらぎによるインフレーション宇宙の観測には、大角度(方位数l<100) の非等方性の観測が必要である。そのため、POLARBEAR実験、Simons Array実験では半波長板を用いた偏光変調技術を使用する。しかし、望遠鏡の非理想性等により、定常的な偏光信号が存在すると、検出器の応答性の変動により、大角度観測のノイズ源となってしまう。本研究の目的は、定常的な偏光信号の原因を特定すること、及び、その定常的な偏光信号を打ち消す装置を開発し、望遠鏡に搭載することである。 本年度は、まず既に観測を行っているPOLARBEAR実験のデータを解析し、偏光信号源を調べた。特に、半波長板の反射防止膜の非一様性の影響について詳細に調査した。他の成分をフィットして取り除くことで、半波長板の非一様性の影響だけを取り出し、その強度が観測条件にどのように依存するのかを調査した。その結果、他の成分に比べて信号強度が安定であり、比較的問題にならないことが分かった。 一方、偏光補正装置と同じ原理の較正観測のデータ解析を行い、偏光補正装置にどれだけのワイヤーが必要かどうかを見積もった。京都大学の田島治准教授のグループも同様の装置を用いた較正手法を計画しており、互いに意見交換しながら装置の開発を行った。 1月には京都大学の研究者と共にチリに出張し、実際の望遠鏡を使って、ワイヤーが作る偏光信号の観測を行った。ただし、肝心の半波長板がまだ搭載されておらず、本研究の原理検証には至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請時の計画では本年度はじめにはSimons Array望遠鏡の1台目をチリの観測所に建設し、観測を開始する予定だった。しかし、日本で行われていた統合試験において、受信機のビーム特性の測定が難航し、その結果、1台目のチリへの輸送が半年遅れてしまった。また、本研究に必要不可欠な半波長板もチリには到着しているが、反射防止膜の真空漏れが発生するなど、トラブルが多く、いまだに望遠鏡に搭載されていない。それらの外的要因により本研究の原理検証試験が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
・偏光補正装置の実証試験 開発した偏光補正装置をチリ・アタカマ砂漠の望遠鏡に搭載し、実証試験を行う。偏光補正装置により偏光が作られていること、偏光信号が打ち消せること、大角度観測のノイズが落とせること、望遠鏡の分解能(ビーム)への影響が十分小さいことを確認する。
・長期観測用の偏光補正装置の開発 偏光補正装置の試作機の製作で得られたノウハウ、試験観測の結果を反映し、チリ・アタカマ砂漠の環境下で長期運用可能な偏光補正装置を開発する。開発した偏光補正装置をチリ・アタカマ砂漠の望遠鏡に搭載し、長期観測を行う。
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Research Products
(6 results)