2018 Fiscal Year Annual Research Report
ガス冷却でつくる広帯域・高透過率なCMB光学系-反射防止のいらない断熱フィルター
Publicly Offered Research
Project Area | Why does the Universe accelerate? - Exhaustive study and challenge for the future - |
Project/Area Number |
18H04363
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
小栗 秀悟 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究センター, 基礎科学特別研究員 (20751176)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 宇宙物理 / CMB / 光学フィルター |
Outline of Annual Research Achievements |
宇宙背景放射 (CMB) に含まれる偏光信号パターン「Bモード」を観測することは、インフレーション宇宙論を実験実証する有力手段である。Bモードは微弱であるため、多ピクセルの電波用超伝導検出器を用いて高統計分析する。その際に問題となるのは、電波を取り入れる窓からの放射熱(赤外線)の侵入である。CMB望遠鏡の高感度化は、赤外線を選択的に遮断する断熱フィルターの開発と切っても切れない関係にある。 既存の大口径フィルターは吸収した赤外線の熱を伝導によって縁に逃す。そのため、熱伝導の良い物質 (一般に高屈折) である必要があり、フィルター表面で電波の反射が起こったり、反射防止膜によって透過する周波数に制限を受けたりする。また、縁から熱を逃すため、温度の一様性を保てず、中央部分の温度が高めになる、という課題も抱える。そこで、申請者は、熱伝導を用いない「ガス対流冷却式断熱フィルター」を開発する。 初年度は、ミクトロンフィルムを用いて、真空中・冷却状態で、ヘリウムガスが保持できるかどうかを検証した。もっとも懸念していたのは、フィルムと容器の接合部分である。冷却時に熱収縮率の違いで形状が歪み、リークの原因となる可能性があった。そこで、インロー型の構造にし、インジウムによってシールを行った。理研の所有するクライオスタットに、自作した検証用の容器を設置し、内部にヘリウムガスを封入させた状態でミクトロンフィルムで蓋をし、冷却テストを行った。その結果、この構造でガスをキープできることを確認した。この成果の一部を、研究会のポスター発表で報告した。 また、フィルター性能の検証にむけて、検出器の開発も進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最も大きな開発項目である、ガスの封入の研究開発に、目処をつけることができた。来年度は、この知見をもとに、実際に光を透過させることのできるフィルターを開発する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、フィルターの開発に着手する。現状は、ガスのシール部分の技術検証が終わった段階であり、ガス容器には窓が片側に一つしかない。光が透過できるような形状の構造体を製作し、フィルターとしての性能をテストする。 ガスのシールに関しては、窓が二つになることでフィルムの膨張収縮によってより大きな圧力の緩和が可能になるため、開発コストは昨年より小さいと考えている。フィルターの開発が終了した暁には、GroundBIRD望遠鏡への搭載も検討する。
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