2018 Fiscal Year Annual Research Report
下部マントルでの二相系のレオロジーの制約:多様な粘性率構造の解明に向けて
Publicly Offered Research
Project Area | Interaction and Coevolution of the Core and Mantle: Toward Integrated Deep Earth Science |
Project/Area Number |
18H04369
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
辻野 典秀 岡山大学, 惑星物質研究所, 助手 (20633093)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 下部マントル / ブリッジマナイト / フェロペリクレース / 二相系 / レオロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
下部マントルは主に、ブリッジマナイト(Brg)とフェロペリクレース(Fp)から構成されている。BrgはFpに比べ、2桁以上粘性率が大きいと考えられている。下部マントル中では、歪量が少ないときはBrgがフレームワークをつくり、粘性率を律速している一方で、歪量が大きくなるにつれ、選択的に変形するFpが層構造を形成することで、次第にFpが粘性率を律速することが予測されている。そのため、下部マントルの粘性率構造の多様性の原因の一つは下部マントルの粘性率を支配している鉱物の違いによる可能性があげられる。本研究では、下部マントルの粘性率を実験的に明らかにするために、BrgとFpの量比とその微細構造(歪量)を変数とした下部マントルの粘性率を決定することを目的とする。本研究結果を基に、地球物理学的観測で示された下部マントルの粘性率構造の原因について考察を行うことを目的とする。 2018年度では、主に高エネルギー加速器研究機構KEK, PF-AR, NE7Aに導入されたD111型ガイドブロックを使用し、下部マントル圧力条件での変形実験中の応力―歪同時測定技術の確立を行った。技術の確立に合わせて、Brg単相での一軸圧縮変形実験の応力―歪同時測定を行い、Brgのクリープ強度を1200℃-1400℃の間で決定した。この結果は、BrgとFp二相系で変形実験の際にBrgとFpのどちらが粘性率を支配しているのか知るための指標となるものである。また、同時にBrgとFpの二相系でのせん断変形実験を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度では、主に高エネルギー加速器研究機構KEK,PF-AR,NE7Aに導入されたD111型ガイドブロックを使用した下部マントル圧力条件での変形実験技術及び変形中の応力―歪同時測定技術の確立を試みた。応力測定のためには、単色二次元X線回折像の取得が必須であり、二段目タングステンカーバイトアンビルにコーンをつける必要がある。そこで、コーンを付ける位置・開口角の最適化を行うことで、下部マントル圧力条件までの変形実験技術を確立した。また、KEK,PF-AR,NE7Aでは、単色X線の水平方向の発散が大きいため、シンチレーターをプレスのすぐ傍に置くことで、X線ラジオグラフィー像の改善を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度には、主にBrgとFp二相系でのせん断変形実験を行うことにより、微細構造(歪量)を変数とした下部マントルの粘性率の決定を目指す。応力測定については現在までに大きな問題は解消されているが、高エネルギー加速器研究機構KEK,PF-AR,NE7Aでは、単色X線の水平方向の発散が大きく、現在までのX線ラジオグラフィー像取得システムでは、せん断変形の歪量を測定するためのラジオグラフィー像が水平方向にぼやけてしまい、未だ歪量の測定に大きなエラーが存在する。そこで、シンチレーターを極力試料に近づけることでより鮮明なX線ラジオグラフィー像の取得を目指す予定である。
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