2018 Fiscal Year Annual Research Report
First-principles study of effects of light element on transport properties of liquid Fe alloy
Publicly Offered Research
Project Area | Interaction and Coevolution of the Core and Mantle: Toward Integrated Deep Earth Science |
Project/Area Number |
18H04371
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Research Institution | Hiroshima Institute of Technology |
Principal Investigator |
大村 訓史 広島工業大学, 工学部, 准教授 (90729352)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 液体鉄合金 / 地球外核 / 輸送特性 / 軽元素 / 第一原理分子動力学法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、地球外核を構成する液体鉄合金の輸送特性に対する軽元素含有の影響を明らかにする目的で、第一原理分子動力学法に基づく計算機シミュレーションを行った。本年度の主要な研究成果は以下の通りである。
1)水素、炭素、酸素、ケイ素、硫黄の5種類の軽元素を含んだ液体鉄合金の高圧下における局所構造、具体的には動径分布関数や配位数を調べることで、軽元素の位置(配置)がその種類によって異なることが明らかとなった。軽元素の中でも比較的重いケイ素や硫黄は、液体鉄の置換型(substitutional)位置に存在する。一方、比較的軽い水素、炭素、酸素は侵入型(interstitial)位置に存在していることが分かった。 2)Kubo-Greenwoodの公式を用いて、軽元素を含んだ液体鉄の電気伝導度を計算し、軽元素の含有による電気伝導度の変化を見積もった。この計算により、同じ含有比率で比べた場合、酸素、炭素、水素などのinterstitial型の軽元素に比べて、substitutinal型のケイ素や硫黄の方が電気伝導度をより大きく減少させることが分かった。地球外核の密度とP波速度を再現する軽元素の組成(軽元素の種類によってその組成比は異なる)で比べた場合、最大で20%程度電気伝導度が減少するという見積もりが得られた。 3)軽元素単体の高圧下における性質を調べるため、液体硫黄の高圧下における構造変化についてもシミュレーションを行った。常圧で分子性液体である硫黄は、加圧とともに分子が壊れ金属化が起こる。本研究により、たとえ金属化が起こったとしても200~300 GPaという非常に高い圧力まで局所的に共有結合が残っていることが明らかとなった。さらに高い圧力になるとこの局所的な共有結合も失われ、液体硫黄は単純金属液体(液体ナトリウムなど)と同じ構造を示すことも明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究で、Kubo-Greenwoodの公式を用いて電気伝導度を計算し、軽元素の含有による液体鉄合金の電気伝導度の変化を見積もることに成功している。また電気伝導度などの輸送特性だけでなく、液体の局所構造などの構造的な性質についても軽元素の種類によって異なることを明らかにしており、これら構造の違いと輸送特性に与える影響の違いに相関があることも明らかになっている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでは、単一の組成において液体鉄-軽元素混合系の性質を調べていたが、今後は、第一原理分子動力学法に基づく計算機シミュレーションを用いて、液体鉄-軽元素混合系(軽元素の種類は水素、炭素、酸素、ケイ素、硫黄の5種類)に対し、含まれる量が変化したときに、電気伝導度・熱伝導度がどのように変化するのか、高圧下における輸送特性変化の軽元素含有量依存性を明らかにする。 具体的には、液体鉄に対する軽元素の組成比を10%、20%、30%と変化させ、電気伝導度と熱伝導度の軽元素含有量依存性を調べる。また2種類の軽元素が含まれる鉄-軽元素1-軽元素2の3元系(例えば、鉄-酸素-水素、鉄-ケイ素-酸素など)についても第一原理分子動力学シミュレーションを行い、組成比を変化させ、一種類の軽元素しか含まれない場合との相違点を明らかにする。さらに液体の構造についても詳しく調べ、構造と輸送特性の相関も明らかにする。以上の研究から得られる知見を用いて、地球内部の熱進化過程に関する考察を行う。具体的には、地球内核からの熱流が軽元素の存在によってどれだけ変化するのか、また、それによって推定される内核形成年代がどれだけ幅を持つようになるのかを詳しく解析する予定である。
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Research Products
(4 results)