2018 Fiscal Year Annual Research Report
天然物の元素置換・複合化による生体機能性中分子の創製
Publicly Offered Research
Project Area | Middle molecular strategy: Creation of higher bio-functional molecules by integrated synthesis. |
Project/Area Number |
18H04388
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
大栗 博毅 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80311546)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 中分子 / アルテミシニン / 元素置換 / 二量体型アルカロイド / 自己組織化 / ビスピロリジノインドリンアルカロイド / 制ガン活性 |
Outline of Annual Research Achievements |
一般に中分子型天然物では,標的分子と多点相互作用ネットワークを形成し,強力で特異性の高い分子認識能力を発揮する.本研究ではこの構造特性に着目し,中分子型天然物ユニットを自己組織化させ,超分子形成により機能発現させるアプローチを検討している. 抗マラリア剤アルテミシニン類をガン化学療法へ適用していくためには、細胞内での安定性の改善が課題となる.筆者らは6-アザ-アルテミシニン群を設計し,トリオキサンを有する四環性母骨格を四工程でモジュラー式に触媒的不斉合成するプロセスを開発した(Org. Lett. 2018).本年度は、ガン細胞選択的送達を志向した両親媒性ユニットにアザ-アルテミシニンを連結した中分子群を設計・合成している.活性発現を担うトリオキサン部位を自己組織化により安定化させ,細胞障害性活性種の発生を時空間制御するシステムの開発を検討している. ビスピロリジノインドリン (BPI) アルカロイド群は,トリプトファンが二量化した構造を持つ.生体への適合性に優れたC2対称型 BPI 骨格には,二種類のアミノ基やエステル,芳香環が組み込まれており,機能性ユニットの連結にも適している.BPI 骨格の立体化学に着目して機能性分子を創製すべく,①ヒト結腸癌細胞に対する増殖阻害活性(IC50 = 3.03 microM)(ChemBioChem 2019) ②両親媒性二量体型骨格配座・凝集体サイズ制御(Org. Biomol. Chem. 2018) ③超分子ランタノイド錯体形成様式・キロプティカル特性制御 (J. Org. Chem. 2018) 等に取り組み、いずれも論文公表に漕ぎ着けることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
抗マラリア剤アルテミシニンの元素置換により、アザ-アルテミシニン群を設計し、モジュラー式 de novo合成についての速報論文(Org. Lett. 2018) を公表した。骨格の三方位に導入した置換基を系統的に改変したアザ-アルテミシニン群を触媒的不斉合成し、抗マラリア活性についての構造活性相関を検討して、現在詳報論文を作成中である。更に、ガン細胞の特異環境に感応して、自己組織化するアザ-アルテミシニンアナログを設計合成した。国内共同研究でガン化学療法へ適用可能な有望な知見を得ることができた(日本化学会春季年会口頭発表)。 上記と並行して、中分子二量体型アルカロイドとして、ビスピロリジノインドリンアルカロイド骨格に着目したアプローチを展開した。骨格に組み込まれたアミン、エステルを活用して、種々の機能性ユニットを連結した中分子群を設計・合成した。国内共同研究で、立体化学特異的に制ガン活性を発現するリード分子の創製(ChemBioChem 2019), 両親媒性分子の配座制御・ナノサイズ凝集体制御(Org. Biomol. Chem. 2018), アキラルな金属配位部位を持つ中分子C2対称型アルカロイドの超分子形成、キロプティカル特性の制御(J. Org. Chem. 2018) の成果を挙げることができた。 上記の検討から得られた知見を現在検討中の研究に有効活用することができている。
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Strategy for Future Research Activity |
アザ-アルテミシニンに機能性ユニットを連結した中分子を合成・組織化し,細胞内局在をイメージングする。光照射でアザ-アルテミシンの放出を時空間制御できるDDSシステムの構築を検討する。①生体機能性ユニットの集積化,②ガン細胞ミトコンドリアを標的とした選択的薬物送達,③光照射による薬剤放出,④細胞内特殊条件(高濃度ヘム鉄)がトリガーとなる酸化ストレス亢進等を合理的に協同させたガンの化学治療システムの構築を目指す。上記の取り組みを統合し,中分子の特性を活かして生体機能を制御する研究の基盤整備に貢献する。
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Research Products
(18 results)