2018 Fiscal Year Annual Research Report
フローマイクロ光化学に基づく革新的有機光反応システムの開拓
Publicly Offered Research
Project Area | Middle molecular strategy: Creation of higher bio-functional molecules by integrated synthesis. |
Project/Area Number |
18H04414
|
Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
垣内 喜代三 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (60152592)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | フローマイクロリアクター / 有機光反応 / 二相交互流 / CMOSイメージセンサ / インライン不斉計測システム |
Outline of Annual Research Achievements |
高効率な有機光反応を指向して独自に見出したフローマイクロリアクター技術、すなわち、有機反応相に対して反応に全く関与しない水を不活性相として意図的に導入し、有機-水交互相からなるセグメントフロー法(二相交互流法)の確立と合成手法としての一般化を目的とする。本研究期間は、二相交互流法の効果について、有機反応液の薄膜の形成の効果、有機反応液内での高速混合の効果、さらに、反応場、水、流路チューブの屈折率の違いによるそれぞれの界面での反射がもたらす光の閉じ込め効果の3つについて、関係する様々な物理パラメーターを系統的に調査した。 まず、有機溶媒および水のフッ素系チューブへの親和性の違いにより、水とチューブとの間の有機反応液の薄膜が形成されていることが考察された。ハイスピード動画カメラによるフロー状態での薄膜の存在を直接観測するには至っていないが、水相の長さを変化させることに合わせて反応効率が変化する結果は上記の考察を支持している。また、反応の効率に有機溶媒の粘度が大きく関与していることも明らかとなり、有機反応場内での高速混合も影響していることが分かった。さらに、反応効率と屈折率との間に相関が見られたこと、チューブ内静止状態においても二相反応の効率が向上することから、光の閉じ込め効果が存在することも明らかにした。これら3つの効果が相乗的に働くことにより二相交互流が有機光反応の反応効率を向上させている。 センサの開発については、偏光分析性能の制限要因として残されていたコンピュータでのデータ処理プログラムを改善し、計測の安定度を向上させた。また光学系の構造について再検討を行い、光軸の調整機構を改善し、設定した光学系を安定して維持できるようになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
有機反応相に対して反応に全く関与しない水を不活性相として意図的に導入した、有機-水交互二相からなるセグメントフロー法(二相交互流法)が光反応を効率化する要因について、既に立てていた仮説を立証することができた。この解明で得た知見は、本手法の合成手法としての一般化に繋がるものである。 また、インライン有機光反応システムにおいて、フローマイクロリアクターにおける反応状況のin situ(その場)計測の計測安定性と測定系の性能維持が向上した。
|
Strategy for Future Research Activity |
水以外の不活性物質として窒素ガスを取り上げ、同様の効果がもたらされることを実証する。窒素ガスを利用した場合にも、薄膜形成の効果、反応場内高速混合の効果、光の閉じ込め効果の3つが機能することを立証する。窒素ガスと有機反応液との二相交互流法を確立することにより、反応終了後の生成物と不活性相との分離が不要となり、合成プロセスのさらなる簡略化が期待できる。 また、このように確立した手法を用いた種々の有機光反応を検討し、本手法の適用範囲を調査する。 In situ計測システムは2018年度をもって当初想定したシステムの構築を達成したといえ、さらなる性能向上のためにマイクロフローセルの新構造について検討を行う。これまでに得た方向性を維持しながら、3波長以上に対応する光学系についても可能性を検討する。
|