2018 Fiscal Year Annual Research Report
Efficient Synthesis of Triterpenoid Middle Molecules by Integrating Chemical and Enzymatic Synthesis
Publicly Offered Research
Project Area | Middle molecular strategy: Creation of higher bio-functional molecules by integrated synthesis. |
Project/Area Number |
18H04425
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
森本 善樹 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (90244631)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 含臭素トリテルペノイド中分子 / VBPO / 化学合成 / 酵素合成 / 反応集積化 |
Outline of Annual Research Achievements |
紅藻が生産するトリテルペノイド中分子には臭素原子を含む特徴的な構造が見られ、生物活性としては細胞毒性を示す。しかしながら分子レベルでの作用機構等に関する研究は進展していない。その原因は、天然から得られる量が微量であること、また構造が複雑なため化学合成自体が難しく作用機構研究に必要な分子の供給が十分でないことが最大の原因である。これを解決するためには高効率合成による分子の供給法を開発する必要がある。含臭素トリテルペノイド中分子の生合成は最近の研究から、バナジウム(V) を活性部位にもつバナジウム依存型ブロモペルオキシダーゼ(VBPO)が触媒していると考えられている。本研究では、全合成が報告されていない細胞毒性含臭素トリテルペノイド中分子を合成標的として、我々が蓄積して来た化学合成法とVBPO酵素合成との反応集積化による高効率合成法を開発し、その後の作用機構研究に貢献することを目的とする。 細胞毒性含臭素トリテルペノイド中分子デヒドロチルシフェロール、22-ヒドロキシ-15(28)-デヒドロベヌスタトリオール、ユーボールの化学合成を行った。その結果、22-ヒドロキシ-15(28)-デヒドロベヌスタトリオールの報告されているNMRデータに一致する化合物を合成することに成功した。また、ユーボールの提出構造式は間違っており、化学合成によりC22位エピ体が正しい構造であることを明らかにした。問題のA環部のブロモエーテル化反応であるが、やはり化学合成では望む6-endo環化体の収率はせいぜい35%程度となり、副生物である5-exo環化体が同程度の収率で得られる結果となった。計画していたブロモエーテル化基質前駆体のソゾ属由来のVBPO酵素による酵素反応をユーボールの化学合成前駆体を使って行ったところ、ほとんど反応せず原料の前駆体をMSスペクトルで検出するに留まった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、最初に細胞毒性含臭素トリテルペノイド中分子デヒドロチルシフェロール、22-ヒドロキシ-15(28)-デヒドロベヌスタトリオール、ユーボールの化学合成を行った後、最終段階であるA環部のブロモエーテル化反応をソゾ属由来のVBPO酵素により天然物の化学合成前駆体を使って行う計画であった。しかしながら、これらの化合物の化学合成により22-ヒドロキシ-15(28)-デヒドロベヌスタトリオールとユーボールの提出構造式が間違いであることが判明した。その結果、22-ヒドロキシ-15(28)-デヒドロベヌスタトリオールについては4種類の立体異性体を、ユーボールについては6種類の立体異性体を合成することにより、初めて両化合物の正しい構造を明らかにすることができた。このことが本研究課題の進捗状況がやや遅れている一番の原因である。 もう一つの原因は、VBPO酵素によるA環部のブロモエーテル化反応である。本年度はユーボールの化学合成前駆体を使って本酵素反応を行ったところ、ほとんど反応せず原料の前駆体をMSスペクトルで検出するに留まった。これは当初から予想されていたことではあるが、VBPOによる酵素の基質認識が非常に厳密であるため反応させようとしている合成分子が酵素本来の基質ではないことが考えられる。従って今のままの化学合成前駆体ではVBPO酵素によるA環部のブロモエーテル化反応は非常に困難であり、化学合成と酵素合成の反応集積化が計画通りに行っていないことによる。
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Strategy for Future Research Activity |
ターゲットとしている細胞毒性含臭素トリテルペノイド中分子のうち、デヒドロチルシフェロール、22-ヒドロキシ-15(28)-デヒドロベヌスタトリオール、ユーボールの化学合成法自体は確立できた。しかしながら、ユーボールの化学合成前駆体を使ったVBPO酵素によるA環部のブロモエーテル化反応は進行しなかった。これは当初から予想されていたことではあるが、VBPOによる酵素の基質認識が非常に厳密であるため反応させようとしている合成分子が酵素本来の基質ではないことが考えられる。本研究で扱う含臭素トリテルペノイド中分子の生合成仮説において、VBPO酵素の生合成基質はスクアレンポリエポキシドであることが提唱されている。従って今後の研究の推進方策としては、環化基質により近いと考えられるスクアレンポリエポキシドを化学合成して酵素反応に付してみることが考えられる。 我々の研究室では上記の仮想生合成前駆体と思われるようなスクアレンテトラエポキシドやペンタエポキシドの立体選択的化学合成法を報告している(Morimoto, Y.; Takeuchi, E.; Kambara, H.; Kodama, T.; Tachi, Y.; Nishikawa, K. Org. Lett. 2013, 15, 2966ー2969)。まずはこのスクアレンテトラエポキシドを用いて酵素反応を行うことを考えている。もしこの生合成仮説のような反応が進行すれば、これら含臭素トリテルペノイド中分子に共通する骨格であるABC環部が一挙に構築可能となることから、当初計画よりもより効率性の高い化学合成と酵素合成の反応集積化による高効率合成法が開発できる可能性がある。
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Research Products
(7 results)