2018 Fiscal Year Annual Research Report
Mathematical models of electron scattering in the radiation belt by whistler chorus waves
Publicly Offered Research
Project Area | Solar-Terrestrial Environment Prediction as Science and Social Infrastructure |
Project/Area Number |
18H04439
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
成行 泰裕 富山大学, 人間発達科学部, 准教授 (50510294)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 拡散過程 / 放射線帯 / ホイッスラーコーラス波 / 一般化ランジュバン方程式 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、電子散乱過程におけるホイッスラーコーラス波による非古典的な拡散過程を準線形的な古典的拡散と統一的に扱うスキームの構築を目的としている。2018年度に得られた主な成果は以下のものである: ①波動との非共鳴な相互作用による拡散過程の波動のパラメータ(振幅、バンド幅など)への依存性を議論した。振幅依存性に対する議論から、粒子の分散の時間発展は波動の振幅が大きい場合でも規格化した準線形理論で良く記述できることが分かった。また、バンド幅については依存性が低く、バンド幅が十分小さい場合でも準線形的な記述が良く成立することが明らかになった。 ②①と同様に、波動との共鳴相互作用による拡散過程の波動のパラメータ(振幅、バンド幅など)への依存性を議論した。共鳴相互作用の場合は共鳴する周波数の振幅が重要であるため、波動の磁場エネルギーを一定にすると振幅とバンド幅が独立ではなくなるが、小バンド幅にしても①と同様に粒子の分散の時間発展は準線形理論で良く記述できることが分かった。これは、準線形理論で通常前提とされる波動場のランダム性が担保されない場合でも、拡散過程としてとらえた時に区別がつかない場合があることを示している。 ③非共鳴拡散の場合、各時間窓に対して評価した時間相関関数が減衰振動することが分かった。このような減衰振動する時間相関関数のモデルとして、森の射影演算子法から一般化ランジュバン方程式を導出し、摩擦係数を与える表式を示した。一方で、共鳴拡散の場合は現実的な波動強度の範囲では顕著な時間相関関数の減衰が見られなかった。 ④齊藤ら(Saito etal, JGR, 2016)で波動の由来の統計性を反映させるために導入された位相破壊を確率モデルとして一般化し、ノイズ項の統計的性質によって拡散への影響が異なることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度当初予定していたテスト粒子計算および射影演算子法の適用に加え、位相破壊の確率モデルの検討もすでに進めており、その意味では当初の計画以上の進展がある。一方で、上述したテスト粒子計算結果は、バンド幅を考慮しても確率モデルの前提となる統計性が共鳴散乱のみでは担保されないことを示唆しており、数値モデルに内在し得る位相破壊の物理機構を明らかにするためには波束の振幅変化などの影響をより詳細に検討する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、モデル方程式と直接数値計算との比較を通じ、古典的拡散に極力近い形を念頭に、ホイッスラーコーラス波による電子散乱過程の確率モデルの探索を行う。モデルの探索においては、時間相関関数や拡散係数などの統計量の再現性を重視する。また、上記の振幅変化の影響などに関係して、各粒子が受ける電磁場の時系列データの統計的性質と粒子時系列データの統計的性質の相関を詳細に調べ、衛星観測データとの対応を議論するための理論的な基礎づけを行う。特に、古典拡散・非線形効果が混在する場合やコーラス波による電子散乱で重要な役割を持つ背景場の非一様性の影響について重点的に議論する。並行して、確率項の数値計算スキーム上の取り扱いが計算結果に与える影響について検討を行う。進展が順調であれば、射影演算子法を用いたランジュバン方程式導出に関する技術的側面について、より近年の非平衡統計物理の知見を踏まえた再考も行う予定である。
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Research Products
(4 results)