2018 Fiscal Year Annual Research Report
太陽衛星画像の機械学習による太陽風起因の宇宙嵐予測モデル開発
Publicly Offered Research
Project Area | Solar-Terrestrial Environment Prediction as Science and Social Infrastructure |
Project/Area Number |
18H04451
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
西塚 直人 国立研究開発法人情報通信研究機構, 電磁波研究所宇宙環境研究室, 研究員 (10578933)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 天文学 / 太陽物理 / 機械学習 / 宇宙天気 / 予報 / 統計 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、高速太陽風による宇宙嵐をより精度良く予測するために、太陽衛星観測画像に機械学習手法を適応した新予測手法を開発することである。地球周辺で起こる太陽風の擾乱(宇宙嵐)は、主に太陽面爆発(フレア)と高速太陽風に起因する。太陽風による宇宙嵐が起こると、地磁気が乱れて放射線帯で高エネルギー電子数が上昇し、衛星障害にもつながるため、予め対策を行うための正確な予報が重要である。 本研究は、太陽風の源である太陽コロナホールを画像認識手法により自動検出しつつ、地球に到達する高速太陽風との強い相関をもつ物理量を調べ、統計的機械学習を用いて予測する手法を開発する。申請者は、先行して太陽観測画像と機械学習手法を用いた太陽フレア予測モデルに取り組んでおり、同手法をコロナホール画像と高速太陽風・地磁気データに応用することで新予測手法の開発を試みる。 初年度(2018年度)は、まずは解析環境を整備した後、SDO衛星による太陽観測画像データ(コロナ画像・磁場画像)をNASAアーカイブからダウンロードして取得保存した。次にコロナホールの画像識別手法を過去8年間(2010-2017 年)のSDO衛星画像を用いて手動で解析し、評価を行った。数イベントで行った後、半自動化して長期間データについてコロナホールを検出した。さらに検出領域から面積や位置、光球磁場といった太陽面特徴量のデータベースを作成し、高速太陽風と相関の強い物理量(特徴量)を調べた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、まず太陽コロナ・太陽風観測データを研究室内で解析できる環境整備を行った。SDO衛星(NASA)のWebサイトから過去8年間 (2010-2017年)の極端紫外線データ(193Å等 4000×4000画像)、ACE・DSCOVR・STEREO衛星の太陽風データを保存・蓄積した。 次に、太陽コロナ画像からコロナホール領域を自動検出する方法を検討した。まずは手動解析によって、コロナホールの大まかな特徴を把握した。具体的な方法としては、コロナホールと静穏領域の明暗のコントラストが一番大きな波長を選び(193Å)、暗度の閾値と輝度勾配の閾値を定めて検出した。数例イベントで検出した後、自動化して複数イベントに適用した。 最後に、検出されたコロナホール領域の面積や位置(緯度・経度)、足元光球磁場の極性(正負、Toward極性/Away極性)といった太陽面特徴量のデータベース作成を開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度(2019年度)も継続してコロナホール自動検出手法の評価を行い、自動解析によってコロナホールの(太陽面)特徴量データベースを完成させる。 次に、ACE, DSCOVR, STEREO衛星による太陽風衛星観測データや、京都大学地磁気世界資料解析センターや気象庁地磁気観測所が提供している地磁気データを収集し、高速太陽風の到来日時と速度、宇宙嵐の発生時をリスト化する。これらをもとに、太陽面情報と太陽風・宇宙嵐のラベル付けされた機械学習データベース(訓練用とテスト用)を作成する。 これらから機械学習を使って宇宙嵐発生前の前兆現象(類似パターン)を探索し、太陽風と宇宙嵐を統計予測する。本研究では、サポートベクターマシン、最近傍法、ランダムフォレストという3種類の機械学習手法の適用を試みる(Nishizuka+2017 ApJで使用)。回帰及び分類予測を用いて太陽風速度と宇宙嵐を予測する。予測結果はスキルスコアを用いて評価し、人手による予測精度と比較する。 太陽風・宇宙嵐予測モデルのプロトタイプができたら、実際にリアルタイム運用化に向けても検討する。また研究成果は論文執筆し、投稿する。
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Research Products
(20 results)