2018 Fiscal Year Annual Research Report
磁気圏内衛星の海洋光学探査のためのパルス電子線照射による色中心導入と回復挙動
Publicly Offered Research
Project Area | Aqua planetology |
Project/Area Number |
18H04458
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
末松 久幸 長岡技術科学大学, 工学研究科, 教授 (30222045)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 色中心 / NaCl |
Outline of Annual Research Achievements |
1)低温照射・吸光度測定装置開発 低温吸光度測定装置を作製し、試用した。ETIGO-IIIで室温照射したNaCl単結晶の吸光度を測定したことろ、NaCl中のF中心の460nm、F2中心の720nmのピークが検出可能であることが判明した。また、ステンレス二重容器の低温照射装置を作製し、試用した。事前のCASINOによる計算結果から、70%の電子が容器を透過すると予想した。ETIGO-IIIで2MeVの電子線照射を行ったところ、NaCl単結晶に色中心が生成した。この結果、低温でのNaClの照射が可能であることが分かった。一方、フィルム線量計での測定結果から、照射装置内部では外部の1/10以下の線量に低下した。 2)ドープしたNaClの電子線照射実験 ドープしたNaClの電子線照射実験の前段階として、無ドープNaCl単結晶の電子線照射実験を行った。量研機構の1号加速器にて、2MeVの電子ビームをNaCl単結晶に照射した。この結果、F2とF中心の平衡定数は、ETIGO-IIIで照射した試料とほぼ同じであるが、文献に記載の加速器によるデータより高い値となった。よって、試料中の微量な不純物が色中心の生成に影響していることが分かった。 状態図上にNaClへの固溶域はないCsを使って、結晶成長を試みた。溶融法と水溶媒法でCsClを混合したNaCl粉末を原料として、単結晶成長を試みた。作製した結晶を走査型電子顕微鏡とエネルギー分散型X線分析装置で分析した。この結果、Cs量は検出限界(1原子%)以下であり、第二相が存在しうる粒界がない単結晶を成長させることが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)低温照射・吸光度測定装置開発 低温吸光度測定装置開発では、ETIGO-IIIでの室温照射でNaClに導入したF中心とF2中心を検出することが出来た。これは申請の予定通りである。低温照射装置開発では、ETIGO-IIIで2MeVの電子によりNaCl単結晶に色中心が生成した。これは申請の予想通りである。 2)ドープしたNaClの電子線照射実験 量研機構の1号加速器で無ドープNaCl単結晶の電子線照射実験を行い、色中心濃度が文献のそれと異なり、不純物濃度の重要性が判明した。つぎに、2つの方法を用い、双方で吸光度測定が可能な最大5mmの結晶成長に成功した。これは申請の予定通りである。また、状態図上で固溶域のないCsは結晶成長で排除された。この結果、状態図上で全率固溶しているKはドープした結晶成長が可能であると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
1)低温照射・吸光度測定装置開発 平成30年度の結果から、低温照射装置ではNaClに色中心を導入できるものの、照射装置内部の線量が低いことが分かった。これは、ETIGO-IIIで生成した電子ビームには、その電圧波形の広がりから、最高エネルギーの2MeVより低いエネルギーの電子も含まれていることが示唆された。このため、令和元年度には、より電子透過能の高く、かつ熱の遮蔽に寄与する発泡スチロール製の容器も利用することとなった。 2)ドープしたNaClの電子線照射実験 令和元年度には、状態図で固溶域全率固溶することが分かっているK、固溶域がないMgをドープしたNaClの結晶成長を試みる。KCl、Mg2Clを混合したNaCl粉末を原料として、溶融法と水溶媒法で単結晶成長を試みる。以上の結晶を用いて、ETIGO-IIIで低温での色中心生成、熱処理による回復挙動を測定する。
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