2018 Fiscal Year Annual Research Report
炭酸カルシウムコンクリーションから探る地球・火星の古環境
Publicly Offered Research
Project Area | Aqua planetology |
Project/Area Number |
18H04459
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
城野 信一 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (20332702)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | コンクリーション / 炭酸カルシウム / ナバホ砂岩 / 鉄コンクリーション / 火星 / ブルーベリー |
Outline of Annual Research Achievements |
蒸発実験用の容器を作成した.この容器内にナバホ砂岩層にて採取した砂を封入し,蒸発実験を行なった.炭酸カルシウムの溶解度は非常に低いため,テスト実験として食塩水を用いてまずは実験を行なった.温度と濃度を変えて行なった実験の結果,砂層中にある水面付近で塩が沈殿し,板を形成することができた.当初の研究目標である,炭酸カルシウムコンクリーションの産状の一つを再現できたことになる.一方で,局所的に塩が集中して球を形成することは観察されなかった.
次に,炭酸カルシウムを用いる実験に取り組んだ.炭酸カルシウムは通常の条件だと水にはごく少量しか溶解しない.そこで二酸化炭素ガスをバブリングさせることで溶解度を上昇させ,水1リットルに対して数mgの炭酸カルシウムを溶解させた.この水溶液を用いて蒸発実験を行なった.蒸発皿に水溶液のみを入れて蒸発させたところ,大きさ数10ミクロンの沈殿が形成された.注目すべきは,蒸発皿の側面から1cm程度の範囲では沈殿が見られなかったことである.蒸発皿側面に沈殿が起こったため,蒸発皿を上から観察しても沈殿が見つけられなかったと考えられる.
そこで蒸発皿の中に炭酸カルシウムの単結晶(大きさ1cm程度),またはナバホ砂岩の塊を置いた上で蒸発実験を行なった.その結果,炭酸カルシウム単結晶とナバホ砂岩,それぞれから1cm程度の範囲で沈殿が観察されなかった.この結果が意味することは,固体表面において沈殿が進行するが,種が炭酸カルシウムでもナバホ砂岩でも違いが無い,ということである.ここから,仮に炭酸カルシウムの種結晶が形成したとしても,選択的にその種が成長することは無いことになる.また,砂岩を構成する砂粒子表面においても沈殿が進行することがわかる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
オストワルトライプニングによって炭酸カルシウムコンクリーションが形成するものと当初は想定しており,その考えの上で実験をデザインしていた.しかし今年度の研究で,オストワルトライプニングで炭酸カルシウムコンクリーションが形成することはありえない,ということが判明した.
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Strategy for Future Research Activity |
蒸発+オストワルトライプニングで炭酸カルシウムコンクリーションが形成されることは無い.となると局所的に炭酸カルシウムが沈殿するためには別のメカニズムが必要であることになる.最も考えやすいのは,砂岩の空隙に不均質があることで蒸発速度が場所ごとに違うことである.ある部分は早く蒸発が進み,別の部分では蒸発が進行しない.このように蒸発速度にムラがあれば,蒸発が早い領域で炭酸カルシウムコンクリーションが形成されることになる.この仮説を検証する室内実験を今年度は遂行する.
蒸発皿にナバホ砂岩を詰め,そこに炭酸カルシウム水溶液を染み込ませる.蒸発皿の一部分を板で覆い,蒸発速度に差をつける.このようにして蒸発を進行させ,場所ごとに沈殿量がどの程度異なるのかを明らかにする.サンプル表面に沈殿したカルシウム量を,X線を用いて元素マッピングを行うことで計測する.温度を変化させることで蒸発速度を変化させ,沈殿量の差がどのように変化するかを明らかにする.
さらに,覆いとして用いる物質を変化させ水蒸気の通過量を変化させる.透水係数のコントラストと,沈殿量の差の関係を計測する.これらのデータから,天然に観察される炭酸カルシウムコンクリーションの形成環境に制約を与えることができる.
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Research Products
(2 results)