2018 Fiscal Year Annual Research Report
室内・数値衝突実験による氷天体衝突時のエネルギー分配・化学反応過程の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Aqua planetology |
Project/Area Number |
18H04464
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Research Institution | Chiba Institute of Technology |
Principal Investigator |
黒澤 耕介 千葉工業大学, 惑星探査研究センター, 研究員 (80616433)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 天体衝突 / 衝突誘起相変化 / 惑星システム / 揮発性元素分配 / 火星 / 蒸発岩 / 二段式水素ガス銃 / 質量分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
二段式水素ガス銃は衝突研究において理想的な加速器の一つである. これは標準状態(常圧, 室温)にある巨視的(>0.1 mm)な飛翔体をおよそ9 km/sまで加速可能であることによる. ところが飛翔体加速ガスが計測部に侵入し, 化学汚染を引き起こすことから衝突による蒸発, 脱ガス量の計測や化学反応物を測定する目的では利用できなかった. 今年度は二段式水素ガス銃を用いつつ, 銃由来の化学汚染を極力抑える実験手法を確立し, 衝突で発生するガス成分の気相化学分析を行う手順を確立した. 新手法を火星上で実際に発見されている蒸発岩鉱物(岩塩, 含水石膏)に適用し, 衝突速度を系統的に変化させて蒸発, 脱ガスを開始する衝突速度の閾値を計測した. その結果, 火星における天体衝突条件で岩塩は蒸発, 含水石膏は脱ガス(水蒸気放出)を起こすことがわかった. また火星への典型的な衝突速度程度の衝突であれば含水石膏からの大規模な硫黄ガス放出は起こらないことがわかった. この結果は火星表層の塩素分配には天体衝突が寄与し, 岩塩が析出した古塩湖から塩素の水平輸送を促し得ることを意味している. 火星の表層はそのバルク組成に対して塩素に富んでいることが知られており, 古塩湖の分布はかつて液体の水が流れたとされる地域と一致する. 近年火星表層で強い酸化剤である過塩素酸塩が全球的に存在していることが明らかとなっており, 火星表層で有機物が見つからないことの理由として注目されている. 古塩湖に岩塩として固定された塩素を全球に再分配し, 過塩素酸塩に変化させるには何らかの塩素の水平輸送過程が必要になる. したがって本研究で得られた成果は天体衝突によって駆動される塩素の水平輸送が惑星表層の有機物量の進化に関連している可能性を指摘するものである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新しく確立した手法を適用する最初の標的として蒸発岩鉱物を用い, 学術誌に投稿する成果を挙げることができた. しかし, 一方で当初の予定であった氷標的への衝突実験は試料作製時の難度の高さから取り掛かることができていないため, 「(3)やや遅れている」とした.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は氷試料作製法の確立を目指す. 今回開発した手法は現時点では世界的にも我々の研究グループの専売特許であり, 地球惑星科学で興味ある様々な標的に適用し, 惑星表層システムの揮発性元素挙動を理解するための基礎データを提供することができる. こういった方向転換も視野に入れながら研究を推進する. 具体的にはK/Pg衝突事件の基盤岩だったことが知られている硬石膏, 小惑星中に含まれる水のキャリアの一つである蛇紋岩, 炭素質隕石と組成が同じになるように調製された模擬粉末試料をすでに手に入れてある. これらを標的に用い, 衝突速度を系統的に変化させた実験も合わせて実施していく.
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[Presentation] Experimental study on oblique impacts with various projectiles2018
Author(s)
Ayako, I. Suzuki, Yoichim Fujita, Shunya Harada, Masato Kiuchi, Yasunori Komoto, Eri Matsumoto, Tomomi Omura, Sae Shigaki, Erine Taguchi, Sayaka Tsujido, Kosuke Kurosawa, Sunao Hasegawa, Takayuki Hiraim Makoto Tabata, Hideki Tamura, Toshihiko Kadono, Akiko M. Nakamura, Masahiko Arakawa, Seiji Sugita, Ko Ishibashi
Organizer
9th Workshop on Catastrophic Disruption in the Solar System
Int'l Joint Research
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