2018 Fiscal Year Annual Research Report
液体中に分散したカーボンナノチューブの同期現象
Publicly Offered Research
Project Area | Discrete Geometric Analysis for Materials Design |
Project/Area Number |
18H04475
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
佐野 正人 山形大学, 大学院有機材料システム研究科, 教授 (40344816)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 同期現象 / カーボンナノチューブ / ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
液体中に分散した非常に多数のカーボンナノチューブ(CNT)が、ある条件下で、同期しながら振動しているのが蛍光顕微鏡により直接観察された。蛍光顕微鏡でナノメータサイズの個々のCNTは見ることができないが、不均一な濃度分布は明暗のコントラストとして可視化できる。同期条件では濃度分布のムラが同一方向に同じ位相で振動するので、あたらも画面全体が均一に振動しているように観察される。本研究では、なぜ多くのCNTが同期振動するのかを解明する。 まず最初に、顕微鏡で観察される振動している画像を数値化しなければならない。そこで、2次元位置検出器上に画像を結像させ、光量重心座標(x、y)を測定する。時間tにおける(x、y)は、画像全体の振動を時間の関数として表現している。その座標データをリアルタイムでフーリエ変換すると、動画と同時に周波数スペクトルを測定できる。 今回、特に注目しているのは同期振動のピーク周波数と半値幅である。特に、半値幅は同期の強さに関係していることが考えられるので、CNTの分散条件を変えたときの半値幅の変化を追えば、同期振動の解析可能なモデルの1つである蔵本モデルと比較できる。 さらに、同期条件をつくりだすに必要なCNTネットワーク構造を数学的に評価する。すなわち、そのようなネットワーク構造を実現する分散状態が判明すれば、同期状態が任意に再現できるようになるので、CNT集合体の機能化に結びつくと期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
顕微鏡に2次元位置検出器を導入した。実像を検出器上に結像させることで、時間tにおける画像全体の光量重心座標(x、y)を測定できるようになった。このデータを基に、CNT同期振動の位相空間(位置x、速さv)におけるリミットサイクルが描けるようになった。また、新たにフーリエ変換装置を導入し、座標データをリアルタイムで周波数解析できるようになった。その結果、CNT同期振動の周波数スペクトルを得ることに成功した。また、CNT同期振動以外のノイズに基づく振動も直ちに検出できるようになった。 そこで、2,3の異なる条件でCNT同期振動を観察したところ、CNT同期振動は15Hz付近にピークを持ち、半値幅が条件で異なることがわかった。しかしながら、20Hz付近に顕微鏡由来のノイズが現われることが判明した。
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Strategy for Future Research Activity |
20Hz付近のノイズはCNT同期振動に近いため、起源を突き止め、最小化する。CNT同期振動の周波数が判明したので、今後は、CNT濃度を変化させたときのピーク周波数および半値幅を測定する。特に半値幅は同期の強さに関係しているので蔵本モデルとの比較に有用と考えられる。同様の実験を分散剤濃度を変えて行い、CNTの分散状態が与える影響についても検討する。 さらに、同期振動を起こすためのCNTネットワークに対する条件を数学的に検討する。これは、特定領域内の共同研究として他のメンバーとともに遂行する。
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