2018 Fiscal Year Annual Research Report
外場制御可能な人工原子からなる動的ネットワークの数理構造と機能
Publicly Offered Research
Project Area | Discrete Geometric Analysis for Materials Design |
Project/Area Number |
18H04490
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
斎木 敏治 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (70261196)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ネットワーク / 三角格子スピン系 / コロイド結晶 / 相変化材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
平板スリットに閉じ込められた2次元コロイド粒子ネットワークに対し、コロイド粒子間に強磁性・反強磁性と等価な相互作用を導入し、自律的に全系の基底状態を見出すスピングラス問題解探索機能を実装することを試みた。 2枚のガラス基板からなる2次元スリット内に直径1umのポリスチレンビーズを分散させ、レーザ加熱にともなう対流によって横方向から粒子群を加圧し、2次元三角格子を形成した。さらに、適切なスリット幅において、Buckled相が形成されることを確認した。本研究では、このBuckled相が反強磁性相互作用する三角格子スピン系と等価であることを積極的に活用する。 対流の強さによって粒子間のBuckling相互作用を制御できることを実証した。対流が弱い場合、粒子は頻繁に上下運動し、自由エネルギーが最小となる粒子配置を広く探索するようすが可視化された。対流を強くするにしたがい、粒子配置間のエネルギー障壁が徐々に大きくなり、最終的に自由エネルギー最小、あるいはエントロピー最大の配置に至る過程を観察した。 隣接粒子間に強磁性・反強磁性相互作用と等価な関係を持たせるため、粒子表面にGeSbTeを成膜した。電界下で粒子の自己推進運動を観察し、その運動特性がGeSbTeの相変化にともなってスイッチ可能であることを確認した。また、ポリスチレンビーズと常磁性ビーズを混合することにより、強磁性相互作用を導入することができることを実証した。 また、2枚のガラス基板の空隙に満たされた水が形成する液滴に対し、上面から見た曲線構造に着目した。ポリスチレンビーズを導入することによって液滴に対して境界条件を付与し、さらに磁気ビーズを添加することにより、全系の自由エネルギーの制御も可能とした。磁場印加にともない液滴内において反発し合う磁気ビーズの動的ネットワークについて物理的解釈と数学的な推定方法を議論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マイクロスリットの作製、相変化材料を用いた強い対流の発生、対流を利用した2次元三角格子配列の形成、フラストレーションをもつBuckled相の発現、光強度による対流調節と粒子間Buckling相互作用の制御などの要素技術が一通り達成されている。また、想定以上に大規模な粒子系に対して、これらを実現できている。 スピングラスを実現するにあたって必要な、強磁性・反強磁性相互作用と等価な機構の導入方法として、ポリスチレンビーズにGeSbTeを成膜し、親水性・疎水性のスイッチングを行うことを計画していたが、相反する相互作用の実現には至っていない。ただし、異なる機構として、磁性ビーズの利用を考案し、所望の相互作用機構が得られることを実験的に実証することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
ポリスチレンビーズのみを用いたBuckled相における粒子間相互作用の長距離性を、粒子の運動モード解析によって明らかにする。最適な相互作用を得るための光強度(対流の強さ)を明らかにする。磁性ビーズを用いたスピングラス系の実験を重ね、上記の解析や相互作用の最適化を行う。
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