2018 Fiscal Year Annual Research Report
Development of stimuli-responsive soft crystals with anisotropic shape-transformability prepared by softening of porous crystals
Publicly Offered Research
Project Area | Soft Crystals: Science and Photofunctions of Easy-Responsive Systems with Felxibility and Higher-Ordering |
Project/Area Number |
18H04495
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小門 憲太 北海道大学, 理学研究院, 助教 (40600226)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 多孔性結晶 / 架橋 / 異方伸縮 / 刺激応答性 / ゲル / モンテカルロシミュレーション / クリック反応 / ウレタン |
Outline of Annual Research Achievements |
多孔性結晶のソフト化による刺激応答性異方伸縮ソフトクリスタルの開発に向けて、本年度は①多孔性結晶の事後修飾反応の開発、②多孔性結晶内での重合挙動の調査とモンテカルロシミュレーションによる予測、③さまざまな架橋剤を用いた異方変形ゲルの作製、という3点に関しての詳細な検討を行なった。 ①に関しては、ウレタン化反応がMOFの事後修飾に有用であることを見出した。その成果をChemistry Letters誌に掲載済である。また、国内で開催された国内学会でその進捗状況に関して発表を行なった。ヒドロキシ基を有する有機配位子は様々な環境下で安定に存在できるために適用範囲も広いと考えられる。 ②に関しては、2官能性モノマーを用いた重合の実験とモンテカルロシミュレーションによる重合挙動が正確に一致したことから、周囲に存在するいくつかのモノマーから反応相手を選び出す過程が存在する重合系では重合度が一定の値に収束する一般性を明らかとした。この成果はAngewandte Chemie International Edition誌に掲載決定している。これに際し、所属機関である北海道大学からもプレスリリースを行なった。また、国内で開催された国内学会でその進捗状況に関して発表を行ない、講演賞などを複数回受賞した。 ③に関しては、直方体形状のMOFを加水分解後に鋭角70°未満に達する平行六面体へと変形させる条件を見出した。国内で開催された国内学会でその進捗状況に関して発表を行なった。論文は現在投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多孔性結晶のソフト化による刺激応答性異方伸縮ソフトクリスタルの開発に向けて、本年度は①多孔性結晶の事後修飾反応の開発、②多孔性結晶内での重合挙動の調査とモンテカルロシミュレーションによる予測、③さまざまな架橋剤を用いた異方変形ゲルの作製、という3点に関しての詳細な検討を行なった。 ①に関しては、ヒドロキシ基を有する有機配位子から作製した金属有機構造体(MOF)に対し、イソシアネートやチオイソシアネート誘導体を細孔内部に導入し、事後修飾反応を行なったところ、高い反応率で修飾を行なえたことから、ウレタン化反応がMOFの事後修飾に有用であることを見出した。。 ②に関しては、アジド基を有する有機配位子から作製したMOFに2官能性のアルキニル化合物を反応させることで重合を行なったところ、MOF分解後に得られる高分子の重合度はある一定の値に収束することが分かり、その値は用いるMOF結晶の対称性によって決定されることが明らかとなった。また、高屈曲性のモノマーを用いても環化が抑制されることも見出した。結晶と同じように反応点を配置したモンテカルロシミュレーションで重合挙動を正確に再現できたことから、周囲に存在するいくつかのモノマーから反応相手を選び出す過程が存在する重合系では重合度が一定の値に収束する一般性を明らかとした。 ③に関しては、ジピリジルベンゼンをピラー配位子、アジド基を有する有機配位子をレイヤー配位子として作製したピラードレイヤー型MOFに対し、さまざまな大きさや官能基数を有する架橋剤を細孔に導入し、架橋反応を行なったところ、直方体形状のMOFが加水分解後に鋭角70°未満に達する平行六面体へと変形する挙動が見出された。MOF内部で結晶の対角線上に密な架橋が施された結果であると考えられ、異方伸縮ソフトクリスタルの開発に向けて新たな知見が蓄積された。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は①刺激応答性の付与と②大面積(体積)化に関する検討を行なう。 ①に関しては刺激に応答して長さが変わる架橋剤を開発することを考えている。これまで、刺激に応答して会合解離が変わる架橋剤の合成を考えていたが、このシステムでは解離した架橋剤が再度同じ場所に帰ってくる保証はなく、伸びたら伸びっぱなしになる危険性が排除できない。そこで、今年度合成する予定の架橋剤は長短2本の鎖を有する架橋剤とし、短い方の鎖が外部刺激に応答して結合解離する仕組みとしておけば、この反応点同士は無限遠に離れてしまうことはなく、長い鎖で近傍には存在することとなるので、可逆的に結合解離を揺り返すことができると予想され、ひいては可逆的な伸縮挙動を示すことができると考えられる。短い鎖の反応点にはジスルフィド結合の使用を考えている。これが最もアトムエコノミックであり、鎖を短くできる設計であると考えられる。この架橋剤で架橋したピラードレイヤーMOFのピラー配位子を1官能性の配位子へと交換し、これの異方伸縮挙動に関して検討を行なう。従来のゲルでは架橋点の長さが変わろうがゲル全体の物性に及ぼす影響は微小であると考えられるが、申請者のゲルは極めて高い異方性を有するために、長さの変わる架橋剤を用いることで異方伸縮材料を達成できると考えられる。 ②に関してはディップコータを購入し、カルボン酸基やピリジル基を密生させるように処理した基板を金属イオンとレイヤー配位子の溶液とピラー配位子の溶液に交互浸漬することで基板上にピラードレイヤー型MOFを作製することで、大面積(体積)化を試みる。得られた配向ピラードレイヤー型MOFに対して架橋反応を施し、ピラー配位子の交換を経て、異方伸縮材料の作製を行う。こちらに関しても刺激応答性の付与を検討するとともに、実際の仕事の取り出しに関しても検討を行なう。
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