2018 Fiscal Year Annual Research Report
ソフトクリスタルの熱的特性精密測定と熱・分光イメージングによる熱応答制御
Publicly Offered Research
Project Area | Soft Crystals: Science and Photofunctions of Easy-Responsive Systems with Felxibility and Higher-Ordering |
Project/Area Number |
18H04506
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
森川 淳子 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (20262298)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 有機超弾性 / 熱拡散率 / 相転移 / ハイドロゲル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,ソフトクリスタルの外場(光・温度・力学場)応答による動的過程の熱物性の異方性発現に注目し,測定方法論の開発と,新規ソフトクリスタルの創製を目指した.①せん断応力場,②励起光照射,③温度クエンチ各条件にて,①有機超弾性結晶,②量子ドット,③ハイドロゲルについてミクロ・ナノスケール熱拡散率測定装置を独立に試作し,各々新たな熱物性の特徴を得た.基盤技術としての複屈折のイメージング化についても定量的イメージング法を確立した. 赤外分光による分子配向と複屈折の同時イメージング法開発では,有機結晶の分子配向を赤外・可視波長で同時にベクトルイメージングを行うアルゴリズムを開発し,医薬品原薬(パラセタモール)について適用した. 有機超弾性結晶のせん断印可相転移におけるミクロスケール熱拡散率測定では,テレフタルアミド単結晶のせん断下β相→α相転移時の動的熱拡散率測定を行った.せん断誘起下の熱拡散率変化は,α相,β相の分率から推定した熱拡散率とほぼ一致し,測定法の妥当性を確認した. 量子ドット蛍光を温度プローブとするミクロ・ナノスケール熱拡散率測定法の開発では,温度波の位相遅れを量子ドットの蛍光温度変化をプローブとして検知することで,空間分解能に優れた熱拡散率測定法の開発に着手した.中心波長405 nmのレーザー光誘起による蛍光強度の位相測定から,空間分解能数十ミクロンの熱拡散率のマッピング測定を行った. ポリアクリル酸ゲル(PAAc)のLCST近傍の熱伝導性測定では,昇温過程の温度走査下で,PAAcの熱拡散率はLCSTに向かって減少するが,LCSTを超えて相分離すると急激な上昇を示すことを,微分干渉顕微鏡下のモルフォロジー観察と熱拡散率同時測定により明らかにした.この熱伝導特性の変化は可逆であり,ATR-FTIRによる溶媒和の水素結合ネットワーク変化と熱伝導特性の相関について考察した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ソフトクリスタルの外場(光・温度・力学場)応答による動的過程の熱物性の異方性変化の測定を,①せん断応力場,②励起光照射,③温度クエンチ各条件にて,①有機超弾性結晶,②量子ドット,③ハイドロゲルについて,各々測定装置を新たに設計構築し,実際に,熱拡散率変化として測定することに成功したため,当初の予定を十分に進めることができた.さらに複屈折のイメージング化についても定量的イメージング法を確立した.これらの理由により,順調に進捗していると判断する. 赤外分光による分子配向と複屈折の同時イメージング法開発では,開発したベクトルイメージング法のアルゴリズムを医薬品原薬(パラセタモール)について適用し,成果を論文掲載した. 有機超弾性テレフタルアミド単結晶のせん断下β相→α相転移時の動的熱拡散率測定を,ミクロスケール温度波法で測定する実験システムを設計構築し,これににより世界で初めての,せん断誘起下の有機超弾性時の熱拡散率変化を可視化同時測定することができた. 量子ドット蛍光を温度プローブとする温度波の位相変化の観測を,新規測定システムの設計により行い,位相の周波数変化を捉えることに成功し,高分解能熱物性マッピングに向けて,物性定量化の次のステップに進むことが可能となった. ポリアクリル酸ゲル(PAAc)のLCST近傍の熱伝導性測定では,昇温過程の温度走査下において,相転移近傍のPAAcの特徴的な変化を観測することができ,微分干渉顕微鏡下のモルフォロジー観察とATR-FTIRによる溶媒和の水素結合ネットワーク変化から,相分離近傍の熱伝導性変化について,熱揺らぎと構造発現過程の相関が示唆され,さらなる高空間分解能の重要性が示唆されるなど,次のステップへ向けての重要なデータが示された.
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Strategy for Future Research Activity |
有機超弾性結晶のせん断印可相転移におけるミクロスケール熱拡散率測定では,テレフタルアミド単結晶のせん断下β相→α相転移時の動的熱拡散率測定に成功したが, さらにセンサーの動的制御の速度と精度を上げ, 動的熱物性変化の高精度データを複数の超弾性結晶の相転移に応用するための技術の確立を進める. 量子ドット蛍光を温度プローブとする温度波の位相遅れから求める高い空間分解能の熱拡散率マッピング法では, 中心波長405 nmのレーザー光誘起による蛍光強度の位相測定から,空間分解能数十ミクロンの熱拡散率のマッピング測定を行った. 蛍光probeの化学構造の最適化と, 測定にあたっての濃度や温度などの条件を精査することにより, 本来の高い空間分解能の熱拡散率測定法の開発を進める. ポリアクリル酸ゲル(PAAc)はLCST近傍で特徴的な熱伝導性変化を示すことが,微分干渉顕微鏡下のモルフォロジー観察と熱拡散率同時測定により明らかになり,ATR-FTIRによる溶媒和の水素結合ネットワーク変化や,相分離機能の熱揺らぎとの関係をさらに検討するため, 超高解像蛍光顕微鏡によるサブミクロンスケールにおいても,相分離のモルフォロジー観察を進める予定であり,そのための温度制御装置や疎水性蛍光体とゲルとの親和性などについて,さらに実験を進める.
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Research Products
(11 results)
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[Journal Article] Nanoscale optical and structural characterisation of silk2019
Author(s)
RYU, Meguya; HONDA, Reo;Cernescu, Adrian;Vailionis, Arturas; Balcytis, Armandas; Vongsvivut, Jitraporn; Li, Jing-Liang; Linklater, Denver ; Ivanova, Elena; Mizeikis, Vygantas, Tobin, Mark; MORIKAWA, Junko; JUODKAZIS, Saulius
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Journal Title
Beilstein J. Nanotechnol.,
Volume: 10
Pages: 922-929
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Infrared polariscopy imaging of linear polymeric patterns with focal plane array2019
Author(s)
HONDA, Reo; RYU, Meguya; MORITAKE, Masayuki; Balcytis, Armandas ; Mizeikis, Vygantas, Vongsvivut,, Jitraporn; Tobin, Mark; Appadoo, Dominique ; Li, Jing-Liang; Ng, Soon Hock; JUODKAZIS, Saulius; MORIKAWA, Junko
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Journal Title
nanomaterials
Volume: -
Pages: -
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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