2018 Fiscal Year Annual Research Report
ソフトキラル分子結晶による刺激応答性室温円偏光蓄光材料の創生
Publicly Offered Research
Project Area | Soft Crystals: Science and Photofunctions of Easy-Responsive Systems with Felxibility and Higher-Ordering |
Project/Area Number |
18H04507
|
Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
平田 修造 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 助教 (20552227)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 室温りん光 / 蓄光 / ソフトクリスタル / 三重項励起状態 / 励起子拡散 / 高解像顕微鏡 / 量子化学計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
1秒以上の長い寿命を有する室温りん光(蓄光)は2015年からいくつかの芳香族結晶からも報告されてきているが、分子結晶から室温蓄光を得るためには結晶内の強い分子間相互作用を用いることによる剛直性の追求が一般的であった。最近申請者は、芳香族部位に敢えてより柔軟なシクロ環であるH8部位を導入したH8-binaphytyl骨格のキラル芳香族分子の結晶を用いると効率よい室温蓄光が得られることを見出した。キラル分子結晶からの蓄光特性の発現は初めての現象であり、円偏光蓄光特性などの新規機能発現が期待される。さらに、柔軟なシクロ環であるH8部位の導入により、このような結晶群では蓄光特性が低刺激の力学応答や低温で変化する可能性がある。本研究では、ソフトな非共役部位を有する新規キラル芳香族分子の結晶群を用いて、円偏光蓄光機能の構築と、外部刺激による円偏光蓄光の動的制御を目的とする。 現在までにH8-binaphytyl骨格を有する新規分子の合成を行い、合成したいくつかの分子が結晶状態で10-1 sオーダーの発光寿命を有する室温りん光(蓄光特性)を大気中で示すことを確認し、比較的分子間力が弱い分子結晶においても長寿命の三重項励起子が室温でも得られることを実証した。その室温での長寿命三重項励起子の安定化のメカニズムが、室温でも三重項励起子拡散が大きく抑制され、その結果三重項励起子が欠陥で失活しにくくなっていることに由来していることを高解像顕微鏡および量子化学計算を用いて実証した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H8-binaphytyl骨格を有する新規分子の合成を行い、合成したいくつかの分子が結晶状態で10-1 sオーダーの発光寿命を有する室温りん光(蓄光特性)を大気中で示すことを確認した。またいくつかの分子は非晶状態でもわずかに10-1 sオーダーの発光寿命を有する室温を示した。また、H8-binaphytyl骨格を有する分子結晶の1つでは、弱い分子間力により200℃程度の温度で可逆的に非晶と結晶を可逆的に相変化させることが可能であり、非晶と結晶を温度により記録することで、それぞれ蓄光機能のOFFとONが可逆的に記録されるという特性を確認した。 また、室温りん光を示す分子結晶と示さない分子結晶の三重項励起子拡散特性を高解像顕微鏡を用いて計測したところ、室温りん光を示す分子結晶では三重項励起子拡散をほとんどしていないのに対して、室温りん光を示さない分子ではµmレベルの三重項励起子拡散が観測された。量子化学計算においてもそれら三重項励起子拡散能力の大きな違いが確認され、共役分子結晶において三重項励起子拡散能を抑制することが、室温長寿命りん光発現の重要な要素の一つであることが確認された。このことからよりH8-binaphytyl骨格の分子結晶系のような分子間力な弱いような結晶の系でも、三重項励起子拡散を抑制することで長寿命室温りん光特性の抽出が可能であることが原理的にも実証された。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は上記熱で可逆的に室温長寿命りん光機能のONとOFFの制御が可能な分子結晶をベースに円偏光蓄光機能を得るための材料開発を行う。具体的には、H8-binaphytylの共役ホスト中に凝集時に大きな2色性を有する円偏光発光特性の発現が期待されるゲスト重原子フリー共役分子をドープした材料を設計し合成する。、H8-binaphytylの共役ホストが非晶状態では、ゲスト分子が分散されているため円偏光蓄光特性が発現しないが、H8-binaphytylの共役ホストが結晶状態の際はゲスト分子がホスト結晶の界面で凝集し2色性の高い円偏光蓄光が放射される系の開発を目指す。ホスト結晶は200℃近傍の温度で非晶と結晶の可逆制御が可能であるため、円偏光蓄光の2色性のONとOFFが期待できる。このような熱応答性ホストゲスト系材料を中心に研究を進めると同時に、弱い力学刺激やより低温で蓄光機能の変調が生じるような分子結晶を探索する。
|
Research Products
(17 results)