2018 Fiscal Year Annual Research Report
光で創る金属錯体系ソフトクリスタル
Publicly Offered Research
Project Area | Soft Crystals: Science and Photofunctions of Easy-Responsive Systems with Felxibility and Higher-Ordering |
Project/Area Number |
18H04516
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
持田 智行 神戸大学, 理学研究科, 教授 (30280580)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | イオン液体 / 金属錯体 / 光反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、金属錯体の光反応を利用することにより、結晶やアモルファス等の構造体形成を行うことを目的とする。さらに共同研究を通じて、その機構解明および機能性の開拓を行う。 本年度は第一に、イオン液体の光照射で生成した四核錯体による配位高分子の構築を行なった。シアノ系アニオンを有するサンドイッチ型ルテニウム錯体系イオン液体に溶液中で紫外光照射を行うと、四核錯体が生成した。この結果は、この反応がニート状態ではアモルファス配位高分子を与えることと対照的である。この錯体は、金属イオンがシアノ系アニオンで架橋されたかご型錯体であり、さらに配位高分子形成能を持つことが判明した。この四核錯体の溶媒和物結晶を加熱すると、溶媒和物分子の脱離を起こし、単結晶状態を維持しつつかご型ユニットが連結した1次元配位高分子に転換することがわかった。 第二に、ポリイオン液体と弾性体の光・熱による相互転換を実現した。ここでは光反応によって可逆な形態・物性制御が可能なソフトマターの開発を目的として、サンドイッチ型ルテニウム錯体をカチオンとし、ビニル基を有するアニオンを組み合わせたイオン液体を合成した。この液体を重合させ、淡黄色高粘性液体のポリイオン液体を合成した。得られた液体に紫外光を照射すると、徐々に橙色の弾性体に変化した。これは、光反応によりカチオン骨格が配位高分子に転換したためである。生じた光反応生成物は、共有結合と配位結合の2種類のポリマー構造を有する。この光反応生成物を加熱すると、サンドイッチ型構造が再生して元の淡黄色高粘性液体に戻った。すなわち、光と熱による液体と弾性体の可逆転換が実現した。重合前のイオン液体に紫外光を照射した場合にも配位高分子形成が起こったが、興味深いことに、生成物を加熱すると、サンドイッチ型構造の再生と同時にアニオンの重合反応が進行し、徐々にポリイオン液体に転換した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究において、イオン液体の光反応を用いた構造体形成に関して、基礎原理の構築および反応性の評価を進めることができた。さらに、共同研究による配位構造の解明や生成物の評価も検討を開始した。こうして本手法の基盤が形成され、今後の展開につながる成果が得られつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度得られた結果を基盤として、より広範な金属錯体を用いた構造体形成を試みる。配位高分子およびポリイオン液体の形成に際して、架橋分子を導入した系の構築を行う。あわせて、共同研究を通じ、生成物の構造評価および光反応に伴う物性転換の評価も進める。
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