2018 Fiscal Year Annual Research Report
電場応答性ソフトクリスタルの光電子デバイスへの応用
Publicly Offered Research
Project Area | Soft Crystals: Science and Photofunctions of Easy-Responsive Systems with Felxibility and Higher-Ordering |
Project/Area Number |
18H04527
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
大久保 貴志 近畿大学, 理工学部, 教授 (90322677)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 電場応答性ソフトクリスタル / 誘電性 / 電気伝導性 / インピーダンス分光測定 / 電界効果トランジスタ |
Outline of Annual Research Achievements |
電場応答性ソフトクリスタルは、その巨大な誘電率を利用した新しい光電子デバイスへの応用が期待できる。そこで本研究では、巨大な誘電率を有する電場応答性ソフトクリスタルを電界効果トランジスタ(FET)やキャパシタ、熱電変換素子などの光電子デバイスへと応用することで、ソフトクリスタルの実用の可能性を検証することを目的として研究を実施した。 ①電場応答性ソフトクリスタルの基礎物性評価:ジブチルジチオカルバミン酸を配位子とした電場応答性ソフトクリスタルの薄膜サンプルを作製し、キャリア輸送特性や誘電性に関して検討した。 ②電場応答性ソフトクリスタルを用いたFETの作製:電場応答性ソフトクリスタルをFETへ応用することで低電圧駆動FETが作製できる可能性があることを見いだしている。ただし、これまでのところ電場応答性ソフトクリスタルの単結晶FETに関しては再現性が非常に乏しかった。そこで本年度は真空下でFETの測定が可能な環境を整え、銅フタロシアニンなど標準的な有機半導体に関してFETの動作確認を行った。 ③新規電場応答性ソフトクリスタルの合成:本研究では、ジチオカルバミン酸系に加え、ヘキサアザトリフェニレン誘導体を用いたソフトクリスタルの開発も行っている。臭化銅(I)とヘキサアザトリフェニレン配位子から成る半導体材料は真空蒸着による成膜も可能であり、それら薄膜の物性評価を行った。 ④電場応答性ソフトクリスタルの電子デバイスへの応用:上記臭化銅(I)とヘキサアザトリフェニレン誘導体からなる半導体材料を用いた薄膜太陽電池の開発を行っている。これまでのところ、この電場応答性ソフトクリスタルを有機薄膜太陽電池のホール輸送層に利用した際に、短絡電流密度が増大し、結果として光電変換効率が向上することを見いだしている。この短絡電流密度の増大に電場応答性ソフトクリスタルの光伝導性が関与している可能性を見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は上述の通り、電場応答性ソフトクリスタルの光電子デバイスへの応用を目指し、①電場応答性ソフトクリスタルの基礎物性評価、②電場応答性ソフトクリスタルを用いたFETの作製、③新規電場応答性ソフトクリスタルの合成、④電場応答性ソフトクリスタルの電子デバイスへの応用という研究テーマを実施した。その結果②におけるFETに関しては未だ再現性を得ることができていないものの、それ以外の研究テーマに関しては概ね順調に研究が進んでいる。①に関しては、新学術領域内での共同研究を行うことで、光照射下での単結晶X線構造解析や電場下での単結晶X線構造解析、時間分解光電子顕微鏡測定、テラヘルツ分光測定、熱伝導度測定など当初の計画以上の研究を実施することができた。③に関しては発光性銅一価二核錯体など有機薄膜太陽電池への応用を可能にする新しい金属錯体の合成に成功した。④に関しては電場応答性ソフトクリスタルが有機薄膜太陽電池のバッファ層として利用可能であることを見いだしており、順調に研究が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では電場応答性ソフトクリスタルをFETやキャパシタなどの光電子デバイスに応用し、ソフトクリスタルの新たな応用の可能性を見いだすことを目的として研究を行う。そのため具体的には、①電場応答性ソフトクリスタルの基礎物性の評価、②電場応答性ソフトクリスタルを用いた電界効果トランジスタ(FET)の作製、③新規電場応答性ソフトクリスタルの合成、④電場応答性ソフトクリスタルの電子デバイスへの応用などの研究内容を実施する。本年度実施する主な項目を以下に記す。①に関して今年度は電場応答性ソフトクリスタルのテラヘルツ分光測定、熱容量測定、熱伝導測定などを行い熱伝導の機構などを明らかにする。②として電場応答性ソフトクリスタルに関してFETを作製し、その電場応答性を明らかにする。その際、電場応答性ソフトクリスタルを直接半導体層に用いたFETやゲート絶縁膜として用いたFETなど様々な構造のFETを作製し、電場応答性ソフトクリスタルのFET材料としての可能性を検討する。③は特に発光特性を示す新たな電場応答性ソフトクリスタルの開発を目指し研究を行う。これまで多核銅錯体にて強発光性ソフトクリスタルの合成に成功しており、一連の発光性ソフトクリスタルの合成を行う。④上記③の材料を用いた薄膜太陽電池および電界効果トランジスタを作製し、ソフトクリスタルの光電子デバイスへの応用の可能性を検証する。
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Research Products
(18 results)